内容説明
ジェンダー先進国とされるノルウェー。だが、そこに住む女性たちは幸福なのか。ジャーナリストのリン・スタルスベルグが、「先進国」ができるまでの過程を点検し、仕事と家事、両方の負担に押しつぶされそうなノルウェー人女性たちの肉声を拾い集める。「ジェンダーギャップ」を埋めただけでは解決しない、日本もいずれ直面する本質的な課題を浮かび上がらせる渾身のレポート。
目次
第1章 「仕事と家庭の両立」という難問
第2章 70年代の神話と社会変革の夢
第3章 仕事をすれば自由を得られる?
第4章 キャリア・フェミニズムと市場の力学
第5章 「可能性の時代」は続く
著者等紹介
スタルスベルグ,リン[スタルスベルグ,リン] [Stalsberg,Linn]
1971年ノルウェー生まれ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで社会学の修士号を取得。アムネスティ・ノルウェー、ノルウェー国営放送NRK、新聞「階級闘争」などの媒体でジャーナリスト、コラムニストとして活躍。2013年に『私はいま自由なの?』を発表。アラビア語にも翻訳され、特にジェンダー・ギャップ指数ランキング129位のエジプト(2021年)で、女性読者から大きな反響を得た
枇谷玲子[ヒダニレイコ]
1980年生まれ。デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語翻訳家。大阪外国語大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
125
ノルウェーの働く親たちの苦悩と社会像の特色。幼い子を持つ母親の半数がパートで手当受給条件は厳しく、育休取得の父親が役割を見出せないのが現状。資本主義の踏み台にされるフェミニズム、行き過ぎた個人主義・能率主義や階級差による分断や離婚は日本にも潜在する要素。移民層を雇って獲得した自由は公正なのか?という問いかけも無縁とは言えまい。また、保育環境と6時間労働への執拗なコミットは子供の人権を重視するノルウェーらしい価値観。現代の生活の「男女平等」「自由」の概念と資本主義の相剋に先進国として多様な視座を与える一冊。2023/12/27
とよぽん
59
信じられないほど悲惨で過酷な現状が、冷静に書かれている。これで、男女平等世界一なの? あまりにもジェンダーギャップ指数底辺国の日本と似ている(変わらない)ノルウェー女性の生活に驚いた! かの国でも女性は家事育児などのケア労働と仕事をこなすために時短労働を強いられ、ゆえに社会保障の枠組みから外されて賃金は男性の66%程度という。生きづらさを抱え、ヘトヘトになっている女性がたくさんいるのに、男女平等世界一とか? 研究者、労働運動、心ある政治家、そして当事者の闘いはこれからも続く。2022/01/22
shoko
15
ノルウェーから男女平等世界一って本当に幸せなのかを問う。提起している問題は、フルタイム労働とケア労働の両立の難しさ。背景には、女性解放を男女平等に矮小化してしまった過去の経緯と、それを仕組として維持するワークフェア(労働+福祉の造語)がある。福祉国家のノルウェーは、実は社会保障を全額受けようと思うとフルタイムで働かなければならない。つまり結局人々には選択の自由はなく、共働きを選択するしかない(または経済的リスクを負うか)。より持続可能な社会を構築するためには、労働時間のさらなる短縮が必要ではと提案する。2022/04/17
jjm
14
ジェンダーissueに係る多角的視点を養うのに非常に勉強になった。本書を読めば日本がどこそこの国と比較して遅れているなんて単純な話はできなくなると思う。十把一絡げにはできないということ。82年生まれのジヨンのような人もいれば、それほど働きたくはないと考える人もいる。例えばノルウェーやオランダの女性は男性ほど働きたいと思ってはおらず、フルタイム勤務の女性をむしろ同情の目で見ているという。著者の最終目標はジェンダーissueを超越し、斎藤幸平が有名にした(?)脱成長コミュニズム的な所にあるのではないかと感じた2023/04/20
まこ
12
男女平等とかフェミニズムの究極の理想は、誰もが仕事や家事やらを自由に選べること。その為に色々な制度ができた。あえて制度を使わない、古いと言われる考えをしている人に、なぜ使わないのかと謎の圧をかけてくる人がいる。自由に決めればいい、そうじゃない。仕事か家事か、どっちを選んでも選ばなかった方は誰かがやらないと。作中で提案されている6時間労働は働く全ての人な適用しないといけないと思う2022/09/06