内容説明
校正―規則と心情のあいだで揺れる、きわめて人間的な仕事。英語の間違い見つけます!アメリカの老舗雑誌『THE NEW YORKER』校正係による、細かすぎてユーモラスな校正エッセイ。
目次
カンマの女王の告白
スペリングは変人のもの
どっちが魔女なんだか
彼と彼女のむずかしい問題
屈折してるね、あなたとわたし
カンマは気まぐれ
『白鯨』にハイフンを入れたのは誰?
ダッシュ、セミコロン、コロンがバーに入ると―
アポストロフィの浮き沈み
使うなら*正しく使おう*Fワード
鉛筆狂のバラード
百万ドルの校正者
著者等紹介
ノリス,メアリ[ノリス,メアリ] [Norris,Mary]
1978年から『ニューヨーカー』誌で働く校正者。オハイオ州クリーヴランド出身、現在はニューヨークに住んでいる。『カンマの女王―「ニューヨーカー」校正係のここだけの話』がデビュー作
有好宏文[アリヨシヒロフミ]
1987年北海道旭川市生まれ。京都大学文学部卒、読売新聞記者をへて、早稲田大学文学研究科修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sayan
35
著者の独特な語り口は、学生時代に悩まされた句読記号がいずれも魅力的に思えてくるから不思議である。ヴィクトリア朝時代の作家、巨匠ディケンズの作品から、カンマの女王曰く、句読記号「で」顔文字((((:>))を作るのではなく、そこ「に」感情を込めたと評する。確かに”ーー”(W・ラッシュ)に込めた脅しはダイレクトに伝わってくる。そういえば、英訳「JR上野駅公園口」で主人公の独り言や短い会話場面で現れる連続した「...」ピリオド表記を思い出す。彼の言葉にならない孤独や苛立ち感情がこもっていたなと改めて思いを馳せる。2021/02/11
たまきら
32
すごく楽しみにしていた話題作です。That which (that witch)もそうだけど、いかにもニューヨーカー誌と言いたくなる言い回しや言葉と韻遊びに、どの章でも笑いが止まりませんでした。これを訳すのは大変だったろうなあ!横書きで最初戸惑いましたが、これは仕方ないなあ。以前映像の仕事をしていたとき、ギリシャ人が「ちょっと!Greyのスペル間違えてるじゃないか!」首をかしげながら直すと、アメリカ人が「ちょっと!Grayのスペル間違えてるじゃないか!」…ちなみにどちらも正しいようです。2021/04/19
くさてる
18
「ニューヨーカー」の校正係として働く著者によりエッセイ。英単語や文法に詳しければもっと面白いんだろうなと思う箇所も多かったけれど、言葉の誤用や間違いに対する著者をはじめとする編集者のこだわり、そして作家とのやりとりなどが面白く、英単語ならではのFワードについてや、ハイフン、セミコロンなどへのこだわりを語った章分けも興味深かった。なにより著者の自由な語り口が良いです。2021/03/13
菫子
15
THE NEW YORKER』の校正者で、“Comma Queen“〈カンマの女王〉の異名をもつ方の校正エッセイ。とても楽しかったです!!例えば「weird」はコンテンポラリーロマンスの洋書にもたくさん出てくるから私は最初の頃に覚えた単語なのだけど、著者さんがこの単語にトラウマがあるというのも面白かったです。2021/01/04
mawaji
9
ディケンズやメルヴィルのカンマの使い方を厳しく糾弾し、ヘンリー・ジェイムスの文章からセミコロンやダッシュの正しい使い方を示すカンマの女王の校正エッセイ、堪能しました。好きな言葉が”weird”というのも親しみが湧きます。言語における文法的な性についてはドイツ語フランス語で学生時代に苦労させられたことを思い出しました。「鉛筆狂のバラード」は著者の鉛筆愛が感じられる味わい深い文章でした。「すべての鉛筆はサンドウィッチである」というのは小川洋子さんの「そこに工場があるかぎり」で読んで知ってたのだ。装丁もステキ。2021/06/27