著者等紹介
皆川博子[ミナガワヒロコ]
1930年、京城生まれ。東京女子大学英文科中退。1970年「川人」で第2回学研児童文学賞を受賞後、72年、児童向け長篇『海と十字架』でデビュー。「アルカディアの夏」で第20回小説現代新人賞(73年)、『壁―旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(85年)、『恋紅』で第95回直木三十五賞(86年)、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞(90年)、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞(98年)、『開かせていただき光栄です』で第12回本格ミステリ大賞(2012年)、第16回日本ミステリー文学大賞(13年)をそれぞれ受賞。ミステリ、時代小説、幻想文学等幅広いジャンルで作品執筆を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
63
長編二作品を収録。どちらの作品も後年の絢爛たる歴史絵巻や技巧の限りを尽くした短編と比べるとやはり薄味に感じるのだが、それでも両作品とも事件の背後に戦争の傷跡ともいう物がべったりと張り付いているのは後年の諸作品を思わせるかな。ただよく考えるとこの作品が書かれたのは戦後37年を経た時、今よりももっと戦争というものが身近だった時期なんだな。あと両方とも一見関係のない二つの事件が進展するにつれて両者の関係が明らかになっていくのも特徴。薄味だけどやはりこれらも著者の原点の一つなのだなと思いつつ、面白く読めました。2021/04/22
雪紫
37
皆川さんの文体で綴られる祭りの華やかさの中起こる事件。そこには戦争時代の人の残酷さとそこで育まれた負の心が潜んでいて・・・な共通項を持つ初期作品2作(虹と霧はどこら辺?)。悲劇は事件より元凶となった背景を差してるのでは・・・。「虹の悲劇」犯人は倒叙で明らかになる方も最後に明らかになる方もガチの外道だけど、最後の犯人の背景を思うとなぁ・・・主人公達が助かって良かった。「霧の悲劇」この時代の仕事人の扱いって・・・。最後近く、再会のあのシーンの描写が妖しくゾクゾクさせられる。生活で人と価値観は左右される・・・。2020/11/04
ぐうぐう
33
文庫化されていない、もしくはされていても現在入手困難となっている皆川博子作品を日下三蔵が積極的にサルベージしているが、『皆川博子長篇推理コレクション』はタイトルが示す通り、不遇な状況が続いている皆川ミステリの初期作品を収録している。とはいえ、皆川には抵抗があったようだ。ノベルスとして刊行されたミステリは依頼仕事で書かれたことが多く、本人が気に入っていないことに加え、「『死の泉』でファンになってくれた読者はガッカリしちゃうんじゃないかしら」との懸念からためらいも抱いていたらしい。(つづく)2022/03/14
fukumasagami
19
80年代に書かれたサスペンス2篇。どちらも市井に生きる人たちが事件に巻き込まれ、日常から逸脱して、それぞれの理由から真実を探っていく。太平洋戦争の跡が事件に影を落とすところも同じ、戦後30数年という時代。皆川博子の小説は面白いと素直にワクワクした。2020/10/10
ぐりとぐら
14
前半の『虹の悲劇』読了。二つの話が繋がった時、あっとびっくりしました。なにが起きているのかわからない、特に蓉子のパートは、なにが起きているのかわからずに、不安になりながら読み進めたが、とにかく面白かった。悲しい歴史があるし、悲劇のところは、読んでいるのが辛かった。2020/06/14