内容説明
かつて「猥褻」と呼ばれた小説はいかにして「現代の古典」となったか。掲載拒否、有罪判決、そして焼却処分…モダニズムの先頭を走り続けた、ジェイムズ・ジョイスの「青い本」。20世紀、時代の嵐に虐げられながらも、あらゆる人間を翻弄した、魔性の書物の一代記。
目次
第1部(夜の街;ノーラ・バーナクル;渦巻き運動 ほか)
第2部(郵便と権力;ウルフ夫妻;狂気 ほか)
第3部(はぐれ者の聖書;本密輸業者;王の煙突 ほか)
著者等紹介
バーミンガム,ケヴィン[バーミンガム,ケヴィン] [Birmingham,Kevin]
ハーバード大学大学院修了。現在ハーバード大学の文芸プログラム講師。専攻は、19・20世紀の文学と文化、検閲の歴史と文学の猥褻性など。『ユリシーズを燃やせ』で、PENニューイングランド・ノンフィクション賞(2015年)、トルーマン・カポーティ・文芸評論賞(2016年)を受賞
小林玲子[コバヤシレイコ]
1984年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。早稲田大学院英文学修士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
78
ジェイムス・ジョイス「ユリシーズ」は公式非公式に英米で出版禁止だった。ジョイスの評伝と彼の作品をめぐる、当時の社会状況と出版などの人間模様を描く読み物。正直、ボリュームがあり、学術書まではいかないが型苦しさがあるのか、第一次大戦前後の英米出版業界の知識の無さか、読みづらさがあった。猥褻としてやり玉に上げられたが、その判断は実に恣意的なものでしかない。米国での裁判でようやく出版許可が下りるところで本は終わる。ジョイス作品は今まで読んだことが無かったが、いろいろ興味を持った。当時の文学者などの評価など面白い。2017/11/08
春ドーナツ
4
「ナボコフの文学講義 下巻」のテクストに「ユリシーズ」があって、ついに決着をつけるときが来たかと思ったものの。まずは外堀を埋めようと思って本書を読んだ。本文中にいくつか「ユリシーズ」からの引用があって、初めてその文章を目にしたのだけれど、あまりの訳のわからなさに暗雲立ち込める。ピンチョン氏の「重力の虹」を一応読破したじゃないかと自分を慰めるも、苦戦が苦痛になるのではないかと恐れる。来年頑張ろうかな(ということを去年も書いた)。2017/02/21
CCC
3
『ユリシーズ』読んで「あー分からん分からーん」となった私にはいまいちピンとこないところもありましたが、こんな経緯もあったのかと興味深く読めました。まあ『ユリシーズ』が猥雑であるかという問題以前に、醜悪だから検閲、発禁という発想自体が嫌いなので、『ユリシーズ』のような崇高な作品が検閲されるなんて! という視点が大きい事には少し引っかかりを覚えたりもしましたが。2016/11/13
地下道入口
2
ジョイスの味方をする人間のなんと多いことか! しかし、ジョイスは味方をする人間に対しても手厳しかった。デヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』を思い出した。2019/10/30
selva
2
タイトルは、原題の『最も危険な書物──ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ」を巡る闘い』の方が良いと思う。中身は素晴らしいです。2016/08/21