内容説明
『ジェリーだ。きみのボスに話があってかけたんだけどね』…わたしがとった電話の相手は、J.D.サリンジャー。90年代、ニューヨーク。古き時代の名残をとどめる老舗出版エージェンシー。老作家の言葉に背中をおされながら、新米アシスタントが夢を追う。本が生まれる現場での日々を、印象的に綴った回想録。
目次
第1章 オール・オブ・アス
第2章 冬
第3章 春(表紙、書体、装丁;散らかった本棚;ワールドワイドウェブ)
第4章 夏(売り込み;感情教育;雨の三日間)
第5章 秋
第6章 ふたたび、冬
著者等紹介
ラコフ,ジョアンナ[ラコフ,ジョアンナ] [Rakoff,Joanna]
1972年生まれ。オーバリン大学、ユニバーシティカレッジ・ロンドン、コロンビア大学を卒業。小説『A Fortunate Age』でデビュー、Goldberg Prize、Elle Readers’ Prizeなどを受賞する。「ニューヨーク・タイムズ」「ロサンゼルス・タイムズ」「ワシントン・ポスト」「ヴォーグ」などに寄稿し、「パリス・レビュー」には詩も掲載される。現在、マサチューセッツ州・ケンブリッジ在住
井上里[イノウエサト]
1986年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
76
映画を観たかったのだが、まだ叶わず。先に本を読んだ。サリンジャーを擁する出版エージェントに勤めはじめた、若き日のジョアンナ・ラコフの自伝。仕事のこと、家族のこと、お金のこと、将来への希望と不安、そして何とも居心地の悪そうな彼氏との暮らし。私より年下の作家ではあるが、友人として寄り添っているかのような読書となった。カリスマ編集者パーキンズを描いた映画『ベストセラー』を観たときも、実在の作家役が出てくるとたいして知りもしないのに興奮したが、この本でもサリンジャーの登場に盛り上がった。10代の頃大好きだった。2022/07/12
yamaneko*
45
振り返ると、あの時が転機だったなとはっきり分かるほど、みっちりと濃い出来事に彩られる時期がある。〝サリンジャー・イヤー〟と名付けるほど、出版エージェンシーで働いた1年間で著者の人生は大きく舵を切ったようだ。(穿った見方をすれば「サリンジャー」をタイトルに使ったのは作戦かな?)時代錯誤な職場やNY近郊の生活の描写が風景として感じられるほど、心の動きや痛みが余韻として強く残る。夏の間にいくつかサリンジャー作品を読みたくなりました。2015/07/17
かもめ通信
22
著者がサリンジャーを担当する出版エージェンシーに勤めていた20代の頃の体験を元に綴った回想録。恋に友情に仕事に悩み、自分の生き方を模索する彼女にとって、サリンジャーとその作品との出会いは非常に大きな転機をもたらすことになる。一人の女性が青春時代のあれこれを振り返って綴る物語であると同時に、普段読者の目に触れることがない本が生まれるまでの様々な過程を語った物語でもある。同時にサリンジャーその人とその作品の魅力について語る本でもあり、自分自身に惹きつけながら物語を読む読者たちへの愛が詰まった本でもあった。2015/04/22
くさてる
19
96年のニューヨークで出版エージェンシーとして働き始めた女の子が体験する働くこと、恋すること、生活すること、生活することのあれこれが詰まった一冊。そしてその出版エージェンシーがサリンジャーを担当していたことから、彼女はサリンジャー宛に届く数多くのファンレターを読み、その伝説とも触れあうことになる。彼氏がいても孤独で、働いていても一人前じゃなくて、まだ何物でもない自分自身にもがいている若い女性の独白として、面白く読めたし、せつなかった。サリンジャー好きにも面白いと思います。2015/05/04
ブラックジャケット
13
1995年のニューヨーク、詩人を目指すジョアンナは由緒ある出版エイジェンシーに入社した。会社は、数々の有名作家のエージェントを務めていた。その中でもJ・D・サリンジャーは別格だった。新作小説が出るわけではないが、注目度は衰えない。隠遁して世間の背を向ける態度でさえ神格化され、ファンの熱狂はさめない。ファンレターを送る人は世界中にいる。サリンジャーはファンレターを一切読まない、あしからず。という定例文をジョアンナが送り返し、すべてシュレッダーにかける。基本はサリンジャーネタだが、 豊かで優れた自伝とした。 2023/01/28