内容説明
“海”は19世紀に発見された―ノルマンディの海岸にちりばめられた重層的な“時”を旅し、20世紀文学の金字塔の尽きせぬ魅力を斬新に読み解く、最良の道案内。
目次
プロローグ(海―十九世紀の創造;貝殻の記憶;水中花とジャポニズム)
第1章 浜辺の文化史(モーパッサンの泳ぐ女;海水浴のはじまり―セラピーからレジャーへ;ノルマンディのトポロジー;フロベールのノルマンディ;モーパッサンのノルマンディ;ルパンのノルマンディ)
第2章 浜辺の画家たち―海と美術(ノルマンディ・ゴシック;ノルマンディを描く;ブータンとオンフルール;ノルマンディのモネ)
第3章 花咲く乙女たちのかげに(海への誘い;ゴシックの海;バルベックへの汽車;間奏曲―シャン=ゼリゼ;スワン夫人の花の宴;バルベックへ;バルベック=カブール;バルベックのグランド=ホテル;花咲く乙女たち;海のアルベルチーヌ;エルスチールの美術世界)
第4章 パリを浸す浜辺(『ゲルマントのほう』;『ソドムとゴモラ』;『囚われの女』;『逃げさる女』;『見出された時』)
エピローグ(海、アルベルチーヌ、時)
著者等紹介
海野弘[ウンノヒロシ]
1939年東京生まれ。早稲田大学文学部ロシア文学科卒業。出版社勤務を経て、現在、美術、映画、音楽、都市論、歴史、華道、小説など幅広い分野で執筆活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mii22.
49
『失われた時を求めて』のなかで最も美しくきらきらと輝いていた、第2篇「花咲く乙女たちのかげに」。その主な舞台となったバルベックのモデル、ノルマンディの海岸を中心に『失われた~』に登場する人物や土地、芸術絵画のモデルが図版とともに紹介され、物語を追っていく。これを読むとまたすぐ再読して読み逃した所や、感動した所を確かめたくなる。関連本を含め、読めば読むほど、味わい深く、偉大な作品であることを感じ、あらためて読書の魅力を教えられた気がする。2016/08/09
Ryuko
21
「失われた時を求めて」における浜辺の意味をフランスの人々の海水浴など当時の風俗もまじえて解説してくれた本。読了後1年たつが、引用されているエピソードはどれも印象深いもので、よく覚えている。あぁそうそうそうだったとか、あれはそういう解釈も成り立つのか、とか、思いながら読んだ。時間ができたら「失われた時を求めて」も再読したい。2017/07/09
かふ
14
『失われた時を求めて』に出てきたノルマンディーの保養地バルベックは、海水浴が医療目的の健康法としてイギリスの保養地として始まり、ノルマンディーに進出してきた歴史があるという(欲望の資本主義?)。そのモラル(健康法)からの野生の逸脱がフロイトからモーパッサンと経て、プルーストや同時代のモーリス・ルブランのルパンでもノルマンディーの風景が「奇岩城」として出てくるというのはなるほどと納得してしまった。プルーストとルブランの関係も面白い(探偵小説?)2022/08/05
アルクシ・ガイ
0
「失われた…」関連本ばかり重ねて、肝心の本編は中断したまま。へたにあらすじが頭に入ってしまっているせいで、どこからが未読なのかもよくわからん。2012/11/12