出版社内容情報
不可思議な作品で知られる世界的作家、カフカの実話をもとにした優しさと希望に溢れる物語。この実話は、「カフカと人形」として以前から村上春樹が小説内で語ったり、インターネット上でカフカの逸話として紹介されてきたものの、まだそれほど広く知られてはいません。
・・・1923年の秋、カフカは公園で、人形をなくして泣いている女の子と出会います。カフカは「人形はちょっと旅にでたんだ」と言ってなぐさめると、それから3週間、人形になりきって手紙を書き、届け続けます。
物語のラストは、自分らしく生きる現代の子どもたちへのメッセージが光る。カフカ入門にも。
内容説明
1923年の秋、ドイツのベルリンで公園を歩いていたカフカは、人形をなくして泣いているひとりの女の子にであいました。人形はちょっと旅にでたんだ、きみに手紙を書いていったよ。カフカはそう女の子にかたりかけると、3週間ものあいだ人形からの手紙をとどけつづけたのです。不可思議な作品で知られる世界的作家、フランツ・カフカが人生のさいごにのこした心あたたまるエピソード。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
80
夢を繋ぐ。スープシーの旅は、カフカの夢でもあった気がする。もれなく「旅のお供」が、旅のお守り。ラクダのよだれ、踏まえたオチ。イルマが、”皆”の夢を果たした瞬間♪巻末『作者あとがき』で知る、様々な現実。イルマとカフカの別れの場面が、はっ!と頭に交錯。”2つ”の旅。時代とは言え、様々な意味で切ない。絵も、NHKのみんなの歌のような、少しレトロ風なタッチ。汽車に乗る仲間が少しし上を見上げる、イルマを見守るような栗鼠青い小鳥、どちらも意味深。巻末には、カフカの半生、作品リスト。2024/07/13
Cinejazz
31
〝1923年の秋の日のこと、作家のフランツ・カフカ (1883-1924)と恋人のドーラが、ベルリンの公園を散歩していると、人形を失くして泣いている女の子イルマと出会います…カフカは 「人形は、旅をするのが好きだから、きみに手紙を書いていったよ」「ほんと?何処にあるの?」 「ぼくの家だよ。ぼくは人形の手紙を預かる郵便屋でね。明日には届けてあげるよ」と言って慰めるのでした。…それから三週間、病身の身であったカフカは、人形になりきって手紙を書き、イルマに届け続けるのでした…〟暗く陰鬱なイメ-ジの強い↓2025/04/07
anne@灯れ松明の火
22
新着棚で。予備知識なく借りてきて、あとがきを読んで、「カフカ」が「変身」で知られる作家カフカだと知った。人形をなくして泣いている女の子と出会ったカフカは「人形はちょっと旅にでたんだ」と言ってなぐさめ、それから3週間、人形になりきって手紙を書き、届け続ける。 実話をもとにした話だが、ラストは作者によって改変されているそうだ。皆さんの感想を読み、そのままが良かったのか、改変が良かったのか、迷ってしまう。絵はレベッカ・グリーンさん、訳は 野坂悦子さん2024/03/19
すみっちょ
19
絵がとてもステキ。終わり方は南極でも結婚でもどちらでもよいと思います。この本では作者が変更したけど、実際はカフカはこう書いていたんだよということが明記されているので。私は好きな終わり方でした。たった1ヶ月足らずの間の出来事なのに、読んでいるこちらにとってとても大きな経験になった気がします。イルマにとってもそうだったと思います。彼女が本当に広い世界に冒険の旅に出ていたらいいなと思いました。2024/09/27
Tomonori Yonezawa
16
県立Lib▼2023.11/15 初版1刷▼MOEの新刊紹介で「カフカの実話を元にした絵本」ってのが気になり借り。▼大人向けの絵本という感じ。そして、これがオリジナルなら、とてもいい出来だと思います。▼作者あとがきにて「人形から届く手紙」の結末を変えたことを知る。「なら、カフカで売るなや」と一気に余韻が醒める。こういう、現在の感覚で当時を「おかしい・酷い・間違い」とするのには共感できない。▼実話の結末だって今でも否定される価値観じゃないので、実話そのままで読みたかった。2024/04/26