内容説明
ファッション史の栄華と悲劇。19世紀~20世紀前半、科学技術がもたらした革新的ファッションは、数多くの犠牲者を生んでいた。ファッションの光と影を、写真やイラストとともに鮮やかに映し出す。現代も続くファッションの悲劇、そして犠牲者なき未来へ…。
目次
序論 現実でも物語でもファッションは死を招いている
第1章 病んだ衣服―細菌や寄生虫との戦い
第2章 毒を含んだ技術―水銀入りの帽子
第3章 毒を持つ色素―ヒ素を含む緑
第4章 色―死をもたらす美しい色たち
第5章 絡まる、窒息する―機械に巻き込まれる事故
第6章 炎に包まれる生地―燃え上がるチュチュと可燃性ペチコート
第7章 爆発するまがい物―セルロイドの櫛と人工シルク
結論 ファッションの犠牲者を出さない未来へ
著者等紹介
デーヴィッド,アリソン・マシューズ[デーヴィッド,アリソンマシューズ] [David,Alison Matthews]
カナダ・トロントのライアソン大学ファッション大学院准教授
安部恵子[アベケイコ]
慶應義塾大学理工学部物理学科卒業。電機メーカーで製品開発などに従事したのち、翻訳業。ノンフィクションの書籍を中心に翻訳や翻訳協力などをしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
71
産業革命以後、技術革新によるファッションの大衆化の功罪を見てゆく本。化学合成による安価で鮮やかな緑やモーブの布が生産者に引き起こした重篤なヒ素やアニリンの中毒や、象牙や鼈甲の代替として海亀や象を乱獲から救ったセルロイドがその可燃性ゆえにもたらした火災の悲劇等が語られます。作者は最終章で、このファッションが惹起する問題が続いていることを、ダメージデニムを作る作業者の珪肺症や現在も使われる有毒な緑の染料の事例などから示していて、「跡戻りする」ことは難しいとしても、この問題にもっと意識的でありたいと思いました。2022/05/09
こばまり
62
おしゃれはやせ我慢などというが死んでしまったら元も子もない。シルクハットからダメージジーンズまで、服飾が作る人と着る人にもたらした創傷、障害、死についてとことん調べてある。嗚呼それでもヒ素グリーンのドレスは二百年の時を経ても魅力的に映るのだ。ファッションは病だ。2021/03/11
たまきら
45
先日読んだ本でアリスの登場人物マッド・ハッタ―の描写が、当時帽子職人は水銀中毒になりやすかったからだったとしりびっくり。この本もその驚きから借りてきました。ファッションが危険になりえる、というのは今も変わりません。料理中の事故、アレルギー。逆に完全に安全なものが難しいのかもなあ…。それでもやっぱり、斬新なものに惹かれちゃったりしますしね。大変勉強になりました。2023/02/01
G-dark
26
人体に害をもたらした世界中のファッションの歴史をまとめた本。本来なら体を美しく飾るだけでなく保護する衣服や化粧によって、怪我をしたり亡くなった事例が幾つも載っています。「けれども問題はおおむね持ち越されており、さらにまったく新しい問題も生じているのが実情だ」と著者が指摘している通り、死を招くファッションは決して過去のものではありません。現在流行しているファッションだって、危険な要素を孕んでいます。「お洒落は我慢」なんて言葉がありますが、この本を読んでいると健康と安全の方が見た目より大事だと気付かされます。2020/12/24
くさてる
21
19世紀から20世紀前半のファッション(服装)と健康についての歴史と解説。カラー図版も多く、分かりやすい。細菌や寄生虫が入り込んだ古着、ヒ素で染められたドレス、機械に巻き込まれやすいファッション、燃えやすい布地……。具体例が多く説得力がある。そんな危険な服装を身に着けたのは単純に流行に乗せられてだけではないこと、当時の人々の生活や人権意識とも深くかかわった問題であることが分かった。そして、それでもヒ素で染められたエメラルドグリーンのドレスは美しい。面白かったです。2020/03/28