出版社内容情報
現在の地球には,数百万とも,数千万ともいわれる生物種が存在する.生物がこれほどまでの多様性を持つに至ったのはなぜなのか.本書では,生物多様性の原動力でもある「種分化」がどのような過程で起こるのかを,アフリカの湖に生息するシクリッドでの研究を中心に丁寧に紹介.さらには,アフリカからキューバ,近くの山で著者がこれまでに実施した野外調査の様子を交えながら,生物の不思議さや面白さ,生物研究の醍醐味を大いに語る.生物(学)への愛にあふれた1冊.
序章 種とはなんだろう?
一 三つの種の考え方(形態学的種/生物学的種の概念/系統学的種の概念)
二 種分化とは何だろう(もし種分化がなかったら/古典的な種分化の考え方)
第1章 交配しなくなる集団――生殖的隔離
一 なぜ受精できないのか(出会いがない/活動時間の違い/繁殖行動が理解できない/好みが合わない/形が合わない)
二 なぜ子孫を残せないのか(ラバが子孫を残せない理由/種なしフルーツはなぜできるのか/どっちつかずで繁殖できない)
野外調査ファイル? タンガニイカ湖のシクリッド~野外調査は楽しい!~(タンガニイカ湖への長い長い行程/深い水深のシクリッド調査/深湖魚釣りとダイビング/タンガニイカ湖での生活/予防接種/空港)
第2章 生物の進化はなぜ起きるのか
一 偶然が左右する進化――中立進化(生物とは何だろう/進化に必要なDNAの変異/偶然起きる変異)
二 自然選択はどのように起こるのか(集団内の差/適応度とは何か/集団内の差の遺伝/適応/物を見るしくみと視覚の適応/元に戻ることもある進化――透明度の高い湖での視覚の適応/機能を強化する進化――透明度の低い湖での視覚の適応)
三 性選択(性選択の集団内の差/繁殖成功率の差/集団内の差の遺伝/繁殖様式と性選択と親の投資/性的二型)
野外調査ファイル? 日本の亜熱帯と温帯のサンゴ~未知への挑戦~(野外調査の準備/いざ測定へ~三宅島編~/いざ測定へ~沖縄編~)
第3章 地理的な分断が引き起こす種分化
一 物理的に隔離された種の進化(地質学的な変動が要因となった種分化/パナマ地峡とテッポウエビ/固有種はなぜできるのか/ハワイのハエとボトルネック効果)
二 再会した二つの種の接触(強化とは何か/強化の役割)
三 進化によって地位を確立する(なぜ適応放散は起きるのか/実際に起きた適応放散)
野外調査ファイル? インドネシア・スラウェシ島のマカク~新しい研究の始め方~(まずは現地での観察から/研究の戦略を立てる/サンプルの採取/スラウェシ島での日々/気をつけるべきこと)
第4章 遺伝的な交流があっても起こる種分化
一 限定的な遺伝的交流からの種分化(性選択が引き起こす種分化/形態の違いが生息環境の住み分けを促進する/生態的種分化と感覚器適応種分化/側所的種分化と環境適応/シクリッドの視物質を調べる/生息する水深の影響はあるか)
二 自由な遺伝的交流からの種分化(ダーウィン以来の難問/証明困難な同所的種分化)
野外調査ファイル? キューバでアノールトカゲを研究する~共同研究は重要だ!~(別世界、キューバ/アノール調査/夜間調査/アノール以外の生物)
第5章 種分化がゲノムの分化を促す
一 種間の遺伝的な近さと種特異的な変異(ふたたびヴィクトリア湖のシクリッド/種分化研究の糸口とそこからの発展)
二 種分化に関連するゲノムの領域の探索(変異を受けたゲノム領域の探し方/シクリッドでの探索/種分化に関する領域に含まれる遺伝子とその役割/遺伝子探索から見えてきた複合的な種分化/スラウェシマカクの種分化)
野外調査ファイル? 大学の近くで地衣類を調べる~身近でできる野外調査~(常識外れの生物/フットワークの軽い野外調査)
終章 なぜ生物は多様なのか
寺井 洋平[テライ ヨウヘイ]
著・文・その他
内容説明
現在の地球には、数百万とも、数千万ともいわれる生物種が存在する。生物がこれほどまでの多様性を持つに至ったのはなぜなのか。本書では、生物多様性の原動力でもある「種分化」がどのような過程で起こるのかを、アフリカの湖に生息するシクリッドでの研究を中心に丁寧に紹介。さらには、アフリカからキューバ、近くの山で著者が実施した野外調査の様子を交えながら、生物の不思議さや面白さ、生物研究の醍醐味を大いに語る。生物(学)への愛にあふれた1冊。
目次
序章 種とは何だろう?
第1章 交配しなくなる集団―生殖的隔離
第2章 生物の進化はなぜ起きるのか
第3章 地理的な分断が引き起こす種分化
第4章 遺伝的な交流があっても起きる種分化
第5章 種分化がゲノムの分化を促す
終章 なぜ生物は多様なのか
著者等紹介
寺井洋平[テライヨウヘイ]
1970年、神奈川県生まれ。1999年、東京工業大学大学院生命理工学研究科修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、東京工業大学生命GCOE特任助教などを経て、現在、総合研究大学院大学先導科学研究科生命共生体進化学専攻助教。専門は生物の適応と種分化。現在のおもな研究のテーマは、シクリッド、スラウェシマカク、サンゴの適応と種分化、地衣類の共生と環境適応、ヒトの皮膚形質の適応進化、ウミヘビの海棲適応、ニホンオオカミの島嶼適応と日本犬の成立過程など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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