内容説明
返還交渉停滞の内幕。対日強硬路線を強めるロシアの思惑とは!?日露をめぐる政治内部事情と国際環境を照らし合わせながら、交渉進展へ向けた新しい外交戦略の道筋を探る。
目次
第1章 安倍・プーチン交渉の破綻(「これからはソ連」と語った若き日の安倍;改憲・日露正常化は安倍一族のレガシー ほか)
第2章 なぜ返還を拒否するのか(「ナイスガイ」から「ヒトラー」へ激変;「西側の裏切り」理由に、反欧米外交へ ほか)
第3章 色丹島の憂鬱(二島でも海の面積は40パーセント;色丹島は「東洋の箱庭」 ほか)
第4章 勝負の分かれ目(島が日本にいちばん近づいた時;「スターリン外交の過ちを正す」と宣言 ほか)
著者等紹介
名越健郎[ナゴシケンロウ]
1953年、岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業後、時事通信社に入社。バンコク、モスクワ、ワシントン各支局、外信部長、仙台支社長を経て退社。2012年から拓殖大学海外事情研究所教授、国際教養大学特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Isamash
24
元時事通信社外信部長の名越健朗・拓殖大教授2019年著作。四島一括返還論は非現実的と論ず。安倍晋三を鈴木宗男と田中真紀子バトルで鈴木擁護したことで評価。とは言え安倍のプーチンとの交渉を主権意識希薄な通産省外交と批判。プーチンが安倍をもてあそぶ構図とも。振り返るとソ連崩壊時での二島返還が一番可能性あったとする。側から見ていても可能性ゼロに見えた安倍プーチン外交の客観的評価の必要性は自分も感ずるが、四島一括返還以外は一切議論も許さないという空気であったがことが大問題と感じる。多論の議論が存在する国が望まれる。2022/03/28
wiki
17
結論は冒頭にある。曰く「日本の対露外交は、山が動いた時に動かず、山が微動だにしない時に動くので、奇妙な外交になってしまった」。また元米国国務長官ベーカー氏の言を引用して「不動産はロケーションがすべて、外交はタイミングがすべて」と。実は返還されるべきタイミングもあったのに、首脳が本気でないために外交の機を逸した歴史を物語る。思うに、両国の機運が一致することは甚だ難しい。また力ある外交を推進するには内憂を断つ事が必要だと本書を読んで思う。体調(内政)がよくないと、パフォーマンス(外交)も悪いということか。2020/05/31
たけふじ
3
筆者が引用している米・カナダ研究所のビクトル・クレメニュク研究員の「ロシアとの交渉では、大統領第1期目をヤマ場にすべきだ。2期目になるともう政権に陰りが生じ、外交面の妥協ができなくなる」(p211)。この分析がすべてだろう。欧米諸国はゴルバチョフ、エリツィン政権ともに政権発足1期目にたたみかけるように対ソ/対ロ外交を行ったが、日本は機が熟すのを見ていただけだった。筆者が冒頭で言う「山が動いた時に動かず、山が微動だにしない時に動くので、奇妙な外交になった」(p3)ということだろう。2020/09/05