内容説明
母は畑に出る、かまどの前に座る、井戸端で洗濯をする。母の手の下からはいつも、いいもの、面白いものが出てくる、まるで手品師のようだ―。九十五歳の生涯。その笑顔はいのちを包む。娘が綴る作家住井すゑの意外な素顔、逞しくあたたかい人間像。
目次
白い骨
涙の海
母の笑い
光る沼
かまどの火
赤飯と餅つき
まぜごはんのこと
小麦まんじゅう
藤代へ行く日
雨蛙の財布
夏帽子を買いに
毛糸編みとカイロ
東京のカアチャン
とんだ失敗
大和恋い
さいごの対話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かもめ通信
14
この本を読むまで、住井すゑさんについては、『橋のない川』のようなメッセージ性の高い小説を書く強くたくましい女性、病弱で稼ぐあての全くないまま小作農解放運動に没頭する夫と4人の子どもを抱えて筆一本で一家を支え続けた小柄な肝っ玉母さん……といったイメージを勝手に抱いてきたのだけれど、娘が語る母の姿は、私の想像とは全く違っていた。 女性として、妻として、母として、作家として、そしてなにより人として、けなげで、一生懸命で、精力的で、生き生きとして、信念を持つ魅力に溢れた亡母を誇りに思う娘の気持ちが愛おしい。2014/11/26
アネモネ
1
橋のない川を読む前に、作者の住井すゑさん自身のことをもっと知りたいと思って読んだ。娘さんの母親への敬慕がいっぱい。住井さんのスーパー母親ぶりに脱帽。2021/07/07
kobayo
1
筆者の本を読みはじめてから住井すゑにつながるとは思っていなかった。毅然としつつ温かい女性であったことがうかがえる。2017/05/03
ゆかりさん
0
古書モダン・クラシックの古賀さん推薦の本。母から子へ、子から母への愛がたっぷりつまっている。風邪の時、母がふとんのスソを軽く叩いてくれる時のあの安心感を思い出した。 また、今までほとんど本を読んでこなかったことを痛感させられる、言葉の豊かさ…。分からない言葉がありすぎた。ちょっとずつ蓄えていこう。2016/02/26