内容説明
子どもに語る「3.11」。心の奥深くに鋭く問いかける長谷川集平の絵本世界。
著者等紹介
長谷川集平[ハセガワシュウヘイ]
1955年、兵庫県姫路市に生まれる。絵本、小説、評論、翻訳、作詞作曲、演奏など多様な表現を試みる。2002年から京都造形芸術大学客員教授。1976年第3回創作えほん新人賞を受賞した『はせがわくんきらいや』(すばる書房/現在、復刊ドットコム)でデビュー。森永ヒ素ミルク中毒事件(長谷川自身もヒ素の入った粉ミルクを飲んだ)を扱いながら、日本人の生活や心理を大胆に切り取り、斬新な絵本作法で鮮烈なデビューを飾った。『見えない絵本』(理論社)で、1990年第20回赤い鳥文学賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
103
【あの場所】で、その人は流れに逆らって泳いでいた。スーツを着たままで、炎が漂う海を。「早く帰りたいのです」。そう言いながら、透き通っていって、消えていった……。そんな人をたくさんみた。娘がいう。「あそこで何があったの?」。伝えなければ。でもまだ、言葉にはできそうもない。長谷川集平さんがみた東日本大震災。感想は難しい。ただ感じることはできる。これは、絵本だからできるメッセージの伝え方かもしれない。2013年4月初版。2016/02/24
chimako
55
【ライオンズクラブより】帯には「東日本大震災は終わっていない。失ったものの大きさにりつぜんとする」とあります。おとうさんはいろんな人を見ました。津波の中家に向かって泳ぐ人、赤ちゃんを抱いて遠く遠く逃げる人。その人たちは透明になったり、遠くに離れたりして消えてしまいました。家に帰ったおとうさんは娘に聞かれます。「あそこでなにがあったの?」とおとうさんは答えます。「いえにかえるひとととおくにいくひと。ぼくらのようにテレビやしんぶんにのらないひとたち」言葉にできない事が本当に起こったのは、たった三年前。2014/06/27
かおりんご
41
絵本。3月11日に合わせて読み聞かせをしたくて、借りてきたけれど、これは低学年には難しそうです。何故、流されていた人が消えたのか、思いを馳せることができるかどうか。2016/03/08
Maiラピ
34
短い言葉と象徴的な絵、説明がなくとも、あっこれは3.11の震災の絵本だと日本人なら誰でもピンとくるだろう。そしてそれぞれの“あの日”に想いを馳せる。これはだぶん大人向けの絵本。もし子どもが読んで、このお父さんはこの子になにを話したかったの?って訊かれたら・・・わからない。もう自分の中であの日が過去になった人もいる反面、まだずっとあの日が続いて過去にはならない人たちがいる。それを他人事で見てる人ではなくて、みんなで共有しながら、これから生きていかないとな。2013/06/07
anne@灯れ松明の火
21
仲良しのブロガーさんご紹介。3.11テーマの絵本。被災地の様子を娘に聞かれ、主人公は言葉に詰まる。「まだ、ことばにできそうにない」。もう3年、いや、まだ3年。まだまだ言葉にするのは難しい。もしかしたら、ずっとできないのかもしれない。でも、私たちは、娘と一緒に、せかすことなく、「まつ」しかない。ブロガーさんが、過去・被災地の様子は赤のライン、現在・娘と話す様子は青のラインで描いてあると指摘。ということは、ラストのページは、被災地だろう。いつか、このページが青いラインになり、花が咲きますように……!2014/03/02