出版社内容情報
被差別部落の「いま」をとらえ、血筋幻想にとらわれず、誤解や偏見を批判できる力を獲得することをめざした新しい部落問題学習のプログラムを具体的に示す。高校ではアクティブ・ラーニングを用いた指導案を紹介する。
はじめに
第1部 同和教育の意義と課題
? なぜ部落問題を教えるのか
1 これまでの同和教育は何をしてきたのか
大学院生からの質問/部落に対する異質視/暗い、貧しい、閉鎖的
2 なぜ部落問題を教えるのか
忌避される部落問題/見えにくい部落差別/差別に加担する側に立たないために/新たな人との出会い/なぜ部落問題を学ぶのか/人権の語られ方
? 部落問題の何を伝えるのか
1 部落とは何か、部落民とは誰なのか
部落の定義/何が部落となったのか/血筋の違いは差別の根拠ではない/〈われわれとは違う〉という異質視
2 部落の多様性
部落はどこにあるのか/同和地区人口・世帯と同和関係人口・世帯/同和地区の分布と世帯数規模/多様な産業
3 高度経済成長期における就労の変化
高度経済成長と労働需要の増大/安定化する若年層の就労/就労の安定化傾向
4 1990年代以降の新たな問題の顕在化
就労の安定化傾向の鈍化/経済的安定層の流出/救貧事業としての同和対策事業/流入人口の性格
5 差別事象の現状
増え続ける部落外出身者との結婚/なぜ部落外出身者との結婚が増えているのか/就職差別の現状/増加する顔の見えない差別事象/「変化」と「いま」を教える教育
? 部落の歴史を学ぶ、部落の歴史から学ぶ
1 なぜ、部落の歴史を学ぶのか?
2 中世
村と都市の自治―異質な他者への差別と排除を前提として/庭園づくりで活躍した河原者―「穢多」の初出と被差別民が担った文化/各地で争う戦国大名―戦国大名と被差別民
3 近世
身分制社会での暮らし―被差別身分の担った役目/島原・天草一揆と宗門改め―宗門人別帳によって確立された身分制度/国学と蘭学―『解体新書』と被差別身分/諸藩の改革―抵抗運動としての渋染一揆/攘夷の失敗と倒幕運動―攘夷戦争と被差別身分
4 近現代
古い身分制度の廃止―「解放令」と「解放令」反対一揆/米騒動と政党内閣の成立―部落の窮乏化と反発/解放を求めて立ち上がる人々―全国水平社と水平社運動/新憲法の制定―日本国憲法に明記された部落問題/同和対策審議会答申―「国民的課題」としての部落問題
第2部 小学校、中学校、高校のプログラム
? 小学校―同和教育を核にした学級づくり
1 小学校編を執筆するにあたって
「部落」を語る必要性/現場に寄り添い、応援するプログラム/人と人とをつなぐネットワーク
2 同和教育発の学級づくり
子どもたちとつながる交換ノート/核を据えた学級づくり―子どもの現実を深く知るための家庭訪問/保護者とつながる学級通信
3 小学校における部落問題学習の進め方
江戸時代を生きた人々―新しい学問を切り開く/食肉の仕事をとおして/命をつなぐ
4 まとめ
? 中学校―社会科の教科書を使って
1 中学校現場の悩み―問題意識はあるのだが…
「部落差別は過去のこと?」―教職員の世代交代のなかで/差別は、社会のあり方、自分の生き方に関わる問題―教職員の関心の高い人権課題/「時間がない」「資料がない」「地区がない」―部落問題学習を妨げるもの
2 中学校の歴史教科書を使った「人権の歴史」(『新編 新しい社会 歴史』〈東京書籍、平成28年度、中学校〉を使って)
河原者たちの優れた技術―「ケガレ(穢れ)」の差別意識/江戸時代、ピラミッド型の身分制度はなかった/1871年8月28日太政官布告(いわゆる「解放令」)と部落差別/人の世に熱あれ、人間に光あれ/個人の尊重(個人の尊厳)―日本国憲法の制定/部落差別の撤廃は、国民的な課題
3 歴史を学ぶのは?―今を考え、未来を語ろう
? 高校―アクティブ・ラーニングの手法を用いた部落問題学習の進め方
1 高校現場がかかえる問題点
時間がたりない/部落問題学習は「特別な授業」/部落差別の解決方法は愛、やさしさ、思いやり?/教員(指導者)に学習経験がない/リアリティ(現実感)の希薄さ
2 参加型(参加体験型)学習の広がりは何だったのか
3 アクティブ・ラーニング型学習の必要性
アクティブ・ラーニングとは
4 アクティブ・ラーニングを用いた部落問題学習―兵庫県立加古川東高校における実践例をもとに
はじめに/「ジグソー法」とは何か
指導案A 部落の歴史 1(中世?江戸時代)―差別の源流を探る
教員用マニュアルA/教員用レジュメA/生徒用プリントA/記録シートA/生徒用レジュメA/チェックテストA
指導案B 部落の歴史 2(明治?現代)
教員用マニュアルB/生徒用レジュメB/記録シートB/チェックテストB
指導案C 発展的学習 部落差別をなくすために必要なもの(こと)を明らかにする
教員用マニュアルC/記録シートC/提言シートC
5 教員も能動的学びを
コラム
1 部落差別はもうなくなっている?
2 「寝た子を起こすな」論とは
3 結婚差別―私の場合
4 「差別をしない」教育ではなく、「差別をなくす」教育を
5 部落と同和地区は、どう違うのか
6 部落差別が解消した社会とは?
7 地域教材を活用しよう
8 「気にしない」から「つながる」へ
9 「どこに部落があるの?」との質問にどう答えるか
10 立場を自覚していない部落の子どもをどう支えるか
11 血筋が違う? 自分の祖先をたどってみよう
12 部落は閉鎖的? 親に居住歴を聞いてみよう
13 「部落差別はもうなくなっているのだから、取り組まなくていい」という当事者に出会ったときの対応は?
14 逆差別って何?
15 少数者に対するステレオタイプ
16 部落に近親結婚は多いのか?
用語解説
学習をさらに深めるための図書紹介
ひょうご部落解放・人権研究所[ヒョウゴブラクカイホウジンケンケンキュウショ]
部落問題と人権問題の歴史や文化、教育に関する調査研究並びに教育啓発活動を行い、部落問題と人権問題のすみやかな解決に寄与することを目的とし、調査・研究、啓発、出版などの事業を行う一般社団法人。
内容説明
小学校・学級づくりに生かす同和教育。中学校・教科書を使った新しい部落史学習。高校・アクティブ・ラーニングを用いた指導案。
目次
第1部 部落問題学習の現状と課題(なぜ部落問題を教えるのか;部落問題の何を伝えるのか;部落の歴史を学ぶ、部落の歴史から学ぶ)
第2部 小学校、中学校、高校のプログラム(小学校―同和教育を核にした学級づくり;中学校―社会科の教科書を使って;高校―アクティブ・ラーニングの手法を用いた部落問題学習の進め方)