内容説明
失語症患者における言語データの乱れ方は、じつに、「きれい」である。正しく、整然と、乱れている。脱落や誤りがあっても、きちんとその部分の復元ができるように自衛措置が施されており、脳の中に育った言語知識がそうやすやすと壊れないことを教えてくれる。また、障害を起こした脳といえども、そのはたらきがしなやかであることも教えてくれる。本書では、めざすべき目標を「失語症の言語分析」に絞り、そこに到達するのに必要な言語学の知識と知見を体系的に叙述した。
目次
第1章 はじめに
第2章 言語に関する五つの事実
第3章 言語知識の構造
第4章 言語と文法
第5章 言語の情報構造
第6章 文字と音声
第7章 言語と脳―新しい失語症論
第8章 基礎の言語学
著者等紹介
久保田正人[クボタマサヒト]
1952年横浜市に生まれる。筑波大学大学院博士課程(文芸・言語研究科)中退。千葉大学外国語センター長などを歴任、現在、千葉大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーれ
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「失語症は言語の運用面の障害」という著者の主張はうなずけます。でも「あれ?」と思うこともありました。もっと重度の失語症者のデータについて著者がどう考えているのかを知りたいです。2013/06/20
とも
0
失語症(失文法)の患者は,聞き手が再構築できる旧情報(ほとんど主要部)を落とし,「正しく間違える」という主張は分かりやすかった。この本は,言語聴覚士を目指す言語学の知識を持たない学生を対象にしているようだ。というわけで,言語学の基本的な話はほどほどにしてもっと失語症の話を多くしたら,(私にとっては)さらに興味深い本になっただろう。2009/05/07