内容説明
初等教育効率化のため、科学的音声言語研究のため、国際語としての英語の地位を確立するために、綴り字をより規則的・表音的なものに変えようとしたイギリス人たちの試行錯誤の意味を明らかにする言語文化史研究。彼らの綴り字改革論はドンキホーテ的、空想主義的と同時代の人々から揶揄されることが多かったが、そこに映し出された英語に関する自意識とコンプレックスは、国民国家成熟期固有の社会的・文化的背景のもとで醸成されていた。綴り字改革唱導の各種印刷物のみならず、1870年代の教育行政文書や、OED編纂者たちの手紙、1911年の帝国教育会議議事録などの資料を渉猟した研究成果。
目次
国民統合の言語から国際語へ―英語の自意識とコンプレックスを映す綴り字改革運動
第1部 基礎教育の効率化をめざした綴り字改革論者たち―読み書き能力獲得と国民統合の十九世紀(代表的綴り字改革論者アイザック・ピットマンの生涯―速記考案者の読み書き改革;ロンドン学務委員会の請願運動―綴り字改革運動と『読み方教授法報告書』 ほか)
第2部 言語の科学的研究を志した綴り字改革論者たち―十九世紀の言語学者・音声学者を中心に(世界の民族と言語を探究したロバート・レイサム―比較言語学隆盛の十九世紀;言語学会公認の「英語綴り字の部分的修正案」―OED編纂の時代 ほか)
第3部 「世界語」に完璧を求めた綴り字改革論者たち―二十世紀の展開(簡略綴り字協会と国際語としての英語―大英帝国のなかの綴り字改革論;綴り字改革関連法案の審議 ほか)
結びにかえて
著者等紹介
山口美知代[ヤマグチミチヨ]
1966年京都市生まれ。京都大学文学研究科修士課程修了(英語学英米文学専攻)。ケンブリッジ大学修士(言語学)。現在、京都府立大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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