内容説明
冬晴れの続く十一月。小間物商「丸藤」の看板姉妹・里久と桃は、飾り職人の清七に、鷲神社の酉の市に案内してもらうこととなった。待ち合わせた杜に着くと、清七は母娘らしきふたりを連れていた。愛想のよい母親と反対に、娘・お豊はつれないどころか、敵意むき出しである。その理由とは―。丸藤の品には手が出ない女たちを喜ばせたいと願う姉・里久。いつもまっすぐな姉にほだされ、少しずつ己に素直になっていく妹・桃。日本橋の老舗小間物商をもり立てる姉妹の物語、大好評第三作。
著者等紹介
宮本紀子[ミヤモトノリコ]
京都府生まれ。2012年、「雨宿り」で第6回小説宝石新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイ子
89
シリーズ第3弾。小間物商の大店「丸藤」の娘、里久も商売に慣れてきてお店に出るようになる。高級な商品をどうやったら誰にでも手に入るようにするか里久と桃姉妹のアイデアが光る。お嬢様育ちの桃が手料理に奮闘、見栄えは悪いがお美味しいと食べてくれる家族がいる、それだけで満足。桃の恋しい相手が家を出奔、行方不明に。そして男が哀しい過去を背負って生きてきた事実を知る。特に大きな出来事は起こらない物語の中で、人と人との関わりとか人生の喜怒哀楽が胸に響いて時に鼻の奥がツーンとなる素敵な作品。2020/11/22
とし
80
小間もの丸藤看板姉妹「寒紅と恋」3巻。初読みの作家さんです、いきなり3巻を読んでしまいました^_^;姉の理久さん妹の桃さん性格は違うが、姉に巻き込まれつつ変わっていく桃さん可愛いですね。行方不明の耕之助さん気になりま早く早く初巻から読みます。 2021/07/03
真理そら
73
「親の背でほかの男の丈測り」・・・娘がセーターを編んでいて時々背中に当てて寸法をチェックしても父親は期待して喜んではいけない。里久も丸藤にすっかりなじんでひとまず安心。「大和屋」の耕之助の事情がいろいろ分かってくると桃の想いを叶えることはかなり難しい。里久はそっち方面には鈍感だけれど清七は今後も登場するのかな。どっちにしても縁遠くなりそうな丸藤の姉妹ではある。2020/10/19
ぶんこ
56
里久が酉の市に行く道ですれ違った女性たちの紅を見て、桃との違いに気づき、たとえほんの少しでもいいから寒紅を多くの女性にと知恵を働かす。今回も化粧に詳しい桃の力を借り、そしてお店の奉公人たちも一丸になって実現していく様が面白かったです。面白かったものの、耕之助の失踪と、大和屋の仕打ちに全て持っていかれました。桃と耕之助がどうなっていくのか。続きが気になります。2022/12/16
kagetrasama-aoi(葵・橘)
46
「小間もの丸藤看板姉妹」第三巻。“板紅”を考案して売るお話は、すごく女心の機敏に触れて良いなぁ…と。脇を固める手代頭の惣介、長吉、女中のお民、鏡磨きの職人彦作、それぞれが皆温かみのある人達で、読んでいてほっとします。でも姉妹の幼なじみの耕之助が!辛い生立ちに泣けました。妹の桃の初恋の相手でもあるし…。姉の里久を巻き込んでどんな展開になるのか、不安なような楽しみなような気持ちです。次巻、待ち遠しいです。2021/05/11