内容説明
明治のはじめ海を越えてやって来た異人たちが闊歩する、日本最先端の街・横濱にやって来た庭師の息子・藤野辰吉ことコタツ。今までになかった職業「新聞売り」となり、暴れ馬に撥ねられて足を悪くした妹の絹や、小説を書き糊口を凌ぐ元武士の小見山らに囲まれ、貧乏ながらも日々を過ごしていた。しかし「薄幸な美女」に弱い辰吉は、商売そっちのけで事件に巻き込まれた女性を助けて横濱を駆け回る羽目に。“横浜ガス局事件”“幽霊アンマの謎”―。はたして事件の果てにコタツは何を見たのか、そして江戸と明治の狭間にある闇とは…。第八回角川春樹小説賞受賞作家の受賞後第一作、ここに登場!
著者等紹介
橘沙羅[タチバナサラ]
2006年ハーレクイン・ショート・ラブストーリーコンテスト大賞受賞。2009年『駒、玉のちりとなり』、2010年『天駆ける皇子』(ともに講談社、藤ノ木陵名義)刊行。『横濱つんてんらいら』で第八回角川春樹小説賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かつおさん
17
超面白かった。同じ作家、橘紗羅の『横濱つんてんらいら』を読んだばかりだったので維新後の活気と混沌の横濱の様子や空気感を持ったまま本著に突入。官の専横と民権運動との争いを背景に5年前に新聞売り辰吉の妹、絹を襲った悲劇の真相と新たな疑獄が繋がり燻り出される黒幕たち。前作にも登場したパッとしないモノ書きの栗毛東海こと元・旗本の次男坊、小見山の犯した罪と贖罪。最終章はスピード感満点の緊迫感の中、真相へ向かう展開にページをめくる手が止まらず。辰吉の失恋三連発や妹との関係など”寅さん”ぽくていい。シリーズ物にして〜!2021/05/20
nyanlay
7
明治時代の話はなかなかないし、舞台が横浜と言うのも興味深かった。ただ事件が回りくどく感じました。 2018/04/29
紫
3
明治十六年の横浜を舞台にした時代ミステリ小説連作短編集。主人公の新聞売りコタツこと辰吉は惚れっぽく、思い込みが激しくて衝動的で、稼業を通じて遭遇した事件を解決するために首を突っ込んでいくことに。このコタツ氏、事態をひっかきまわして、好転させたり、悪化させたり、他人に振りまわされたり、他人から利用されたりで、どちらかといえばトラブルメーカーの役どころ。思慮の足らない行動を全編にわたって連発するものですから、素行不良で露悪家の戯作者小見山や新聞記者富田の方がだんだんまともに思えてくるのであります。星4つ。2021/10/06
bvbo
2
明治のはじめ、横浜に移り住んだ新聞売りの辰吉。惚れっぽくてお人好し、仕事そっちのけで事件にかかわった女性を助けるために街を駆け回るはめに。妹の怪我の原因と、横浜の街に関わる大きな事件の原因は想像してた通りだったが、結構夢中で読めた。 前の作品もだけど、明治の横浜が好きなんですね。2018/04/23
カタバミ
1
明治になって町だけでなく人々も変わるイメージがありましたが、変わらなかった、変われなかったものもあり、時代という波に流されるしかないのだな、と思いました。絹は無事でよかったのですが、最後の全て明かされる場面は手紙の意味もわかり、どきどきしながら読みました。2019/09/17