内容説明
東北の小藩、志津野藩の一刀流剣術指南役・市成誠四郎に嫁いできた里絵は、自らも小太刀を遣う天才的な女剣士。江戸育ちの里絵は美しい山野に感動するが、藩内では家中を二派に分ける権力闘争が渦巻き、貧困に苦しむ民がいることを知る。藩主指南役をめぐる他流との確執、新田開発事業に絡む不穏な動き…。里絵は、争いに巻きこまれた夫と舅を支えつつ、剣の腕も磨いていく。相思相愛の夫・誠四郎と温かく見守ってくれる舅の元で、女として剣士として成長していく里絵の清々しい姿を、繊細な文章と迫真の剣戟シーンで綴った傑作時代小説『からたちの記 女剣士道場日誌』を改題し、装いも新たに刊行!
著者等紹介
佐江衆一[サエシュウイチ]
1934年、東京・浅草生まれ。日本橋の丸善に勤め、その後コピーライターとなる。60年、短篇「背」で新潮社同人雑誌賞を受賞し、作家デビュー。90年、『北の海明け』で新田次郎文学賞、95年、『黄落』でドゥ・マゴ文学賞を受賞。同作はベストセラーとなり、TVドラマ化、舞台上演される。96年、『江戸職人綺譚』で中山義秀文学賞を受賞。現代小説から歴史時代小説まで幅広い分野で活躍する。古武道杖術師範、剣道5段(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mc6ρ助
13
強すぎる主人公のバトルアクション小説は難しい(かといって真剣勝負なので再度のチャレンジはないのだろうけれど)。とはいえそこはチャンバラ小説、次から次へと決闘の機会が訪れるが、作者のその工夫に感心してしまう。2022/06/15
零水亭
9
(2017年頃読みました)主人公の里絵さん、何となく黒木華さんのイメージです。表紙絵のためでしょうか?2017/04/11
yamakujira
5
江戸育ちの里絵は小太刀の名手で、在府中に父の道場に通った門人の誠四郎に嫁ぎ、東北の小藩で暮らすことになった。ところが、同じく藩の指南役を勤める流派の恨みを買った里絵は、藩内に渦巻く、藩主が肩入れする改革派と、嫡男を擁する筆頭家老派の権力闘争に巻きこまれていく。危難を乗り越えて、剣士としての成長しながら、夫との愛をさらにはぐくむ里絵の清廉な姿はすがすがしいけれど、人物造形が浅薄に思えるし、里絵が強すぎるから痛快すぎて白けちゃうな。読みやすいけれど、なんだか一時代前の大衆娯楽時代小説みたいだ。 (★★★☆☆)2021/03/09
ひさか
3
1997年11月PHP研究所から、「女剣」のタイトルで、刊行。2001年8月講談社文庫「からたちの記 女剣士道場日誌」として、文庫化されたものを改題し、一部修正の上、ハルキ文庫から、刊行。6つの連作短編。女剣士である里絵に降りかかる火の粉と剣の道と心をうまく描いてあり、心地よい。最終話で、奥義に至った里絵に喝采を贈りたい。2016/09/02