内容説明
大正九年の東京。祭りの夜に、カフェ「入船亭」の女給・照代が殺された。着物を血に染めて店を出てきたのは、同じ店で働く鈴子。鈴子の恋人・古宮は、彼女が殺したのかと考えるが。はかない男女の哀歓を描き、驚きの結末を迎える表題作ほか五篇。人の心の底知れぬ謎、深く秘められた情念から、予想をはるかに超える真実が立ち上がる。不朽の傑作ミステリー、待望の新装版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
90
本作は、著者が『恋文』で直木賞をとった同じ年1984年(昭和59)の円熟の頃に書かれた作品です。5作品どれもが情緒が漂う傑作中編です。個人的には、儚い男女の哀歓を描いた表題作の【宵待草夜情】が好きです。情景描写の巧さに魅了されました。舞台の隅田川べりの柳橋は、私が生まれた本所の隣町なので、この界隈の下町情景が目に浮かんできます。何年かの後に、読み返したくなる作品だと思います。2021/08/28
buchipanda3
79
明治の頃から戦後までを舞台とした上質な本格ミステリ短編集。当時の風情を感じさせる情趣的な文章、それによって紡がれるのは心の奥に秘められた女の情念とそれに纏わる事件。落ち着いた語りで描かれる女性の幻妖めいた姿が印象的だった。どの篇も一筋縄ではいかないミステリで読み応えがあり、著者らしい構図の反転とそれによって哀切、畏怖、驚愕などの感情が茫然の中にもたらされる。「宵待草夜情」していないことの証が判明した時、驚きと疑った後悔と慈愛の感情が一気にきた。「花虐の賊」まさに連城トリック。情愛からの奇想に感服。2019/05/19
yumiko
79
一昨年惜しまれつつも亡くなられた連城さん。その後もアンソロジーや新装版で出会えることがとても嬉しい。極上のミステリーでありながら、男と女の静かに燃える情念を描き出すのを得意とした著者の真骨頂とも言える五編。流れるような端整な文章も、巧緻に組み立てられた構成も、ラスト読者を裏切るかのように反転する景色さえ、すべてが美しく流麗でため息がこぼれる。直接的な表現はなくとも、艶やかな筆致に立ち上る官能の香りにもうっとり。一編一編が宝石のような輝きを放つ、不朽の傑作短編集。2015/07/31
みゆ
71
【昭和の名作散策】短編5話。明治中期から戦後にかけての仄暗い時代を舞台にした男女の情愛ミステリ。下手するとカストリ的な猟奇事件になってしまいそうな題材を連城さんの流麗な筆致が耽美で詩情に溢れる作品に仕上げている。5人の女の狂おしくも激しい情念、堪能しました('∇^d)☆!!2023/05/26
HANA
70
凄い!!今年のミステリベスト1になるかもしれない。著者の明治大正、戦前を舞台にした作品は多々あるが、それに勝るとも劣らない。特に「花虐の賦」の完成度が只事ではない。後追い自殺の謎を追うというミステリとしては正統派ながら、ある一文で全てが裏返るという衝撃は凡百のミステリをこの一文だけで圧倒している。「未完の盛装」もまた上質。これはミステリ読みなれてる人ほどミスリードされそう。各短編に副題として女性名が付けられているけど、その通りエロティシズムや残酷、純情など様々な感情が上質の文体で語られる一冊。最高でした。2019/05/22