内容説明
独り身で子供も持たなかった、仕事ひとすじの啓子は、病気のため五十四歳という若さで亡くなった。啓子の小学生からの親友・宏美は、遺品として梅酢を受け取る。同封されていたノートには、「この梅酢で十円玉を磨いたら、その製造年に五時間だけ意識が戻る」という不思議な体験が記されていた。宏美は怖れながらも、啓子の幸せを願い、彼女を結婚させるために意識のタイムスリップに挑むのだが…。切なく心温かな余韻が胸に沁みる長篇サスペンス。
著者等紹介
新津きよみ[ニイツキヨミ]
1957年長野県生まれ。青山学院大学卒。旅行代理店、商社勤務を経て、88年に『両面テープのお嬢さん』にて小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
らむり
33
タイムスリップものSF。ラストは物足りないかな。2015/05/02
キムチ
32
梅酢に漬けたある年の10円玉・・そこから広がる極小のタイムトンネル、若くして亡くなったリケジョの友人。50歳過ぎともなると人生のしがらみが色々ある。その色々を逡巡しながら周囲の運命を変えられる?!行間の無理と飛躍はいかにも少女漫画チックな感じ。「時を駆けるオバサン」じゃないけれど。ラスト1行にぱっくり口を開けた出来事が待ち受けているのも何か荒唐無稽すぎて、何かなぁ。覆水は盆に返らず、どんな小さな歴史にもifは無い、そう思うからこそ人生は修羅と思わず、生きていると思った読後。2016/09/16
A
17
この本を読んで確かにタイムスリップして過去に戻って、何かを変えた後に現代に帰ってきてもその間の記憶で本人には実感できる物が無いんやなと気づきました。2018/08/04
グリーンクローバー☘
14
ごく普通の主婦が科学者の友人の形見としてタイムスリップできる梅酢をもらう。それを使って我が息子のDV妻との結婚を阻止したり、その友人の結婚を後押ししようとしたり…。ラストは他所の子を守るために身代わりに…。設定がやはりひと昔でちょっと違和感。2024/05/06
こういち
12
タイムパラドックスの疑問を抱えながら行動する主人公・香川宏美の奮闘が郷愁を誘う。誰もが一度は感じること、あの時こうすれば良かったという後悔の念。そんな思いがこの世の中には詰まっているのだろう。本書に主人公の趣味として「裂き織り」が登場する。その手芸の如く、連綿と連なる過去の時間軸と明日へと繋がる今の思いが紡ぎ紡がれて、この世の中は存在しているのかも知れない。ならばこそ、直面する現実を真摯に受け止め、過去に未練を抱くこと無く前を向いて進んでいきたい。2015/05/27