内容説明
ファンドマネージャーの職から退いた主人公の「私」は、ある日かつて付き合いのあったスイス人の男から、金庫に眠った日本の古い株券について調査してほしいと頼まれる。株券にはノートが添えられており、そこには一九三四年に起きた『帝人事件』と呼ばれる大疑獄事件に関わった人たちの、生々しく奇妙な“言葉”が記されていた…。財政界の重鎮を巡る贈収賄事件の暗部に迫る、超一級サスペンス!
著者等紹介
波多野聖[ハタノショウ]
大阪府出身。一橋大学法学部卒業後、国内外の金融機関に勤務、日本株運用のファンドマネージャーとして活躍。現在、『週刊現代』に「カネ学入門」を連載中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
105
元金融機関勤めらしく内容的には調べられている気がしました。比較的短いけれど楽しめました。戦前の疑獄事件で検察官僚による内閣つぶしのような感じを受けました。何か民主党のときもそのような事件があったような気がします。2016/08/10
Walhalla
31
1934年に起きた『帝人事件』を描いた作品でした。政界・官界・財界の大物を次々と巻き込み、内閣総辞職の原因ともなった大事件ですが、人物は実名で登場し、とても濃厚な味わいでした。お恥ずかしながら、私はこの事件をあまり詳しくは知りませんでしたが、著者の波多野聖さんは国内外の投資機関でファンド・マネージャーとして活躍されており、その豊富な知識量を私にも少し分けて頂いた気分です。別作品の『銭の戦争』にも登場した天一坊(松谷元三郎氏)が、この作品でも存在感を示していて面白かったです。2022/03/29
まつうら
29
大疑獄と言われながら真相が謎のままの帝人事件。当時の実録エピソードを紡いで、著者らしい相場の勝ち負けを絡めると、こんなにも味わい深い物語になる! ちょっと感動だ。欲得まみれの福原憲一を舞台回しに、平沼騏一郎が検察に番町会の面々を逮捕させる。ここに帝人株の動きが絡み、禁じられていた相場に手を出して破滅した黒川検事、相場を張らずに相場を取った河合良成、河合のスマートさの裏にある狡さが許せない熱血正義漢の小林中。登場人物も魅力的だ。特に小林については、戦後の活躍のルーツを見たようで勉強になった。おもしろい!2022/05/18
緋莢
20
ファンドマネージャーの職を退いた「私」。ある日、スイスでかつての上司から重要な顧客が残したものについて調べて欲しいと依頼される。それは、株券と日本語で書かれたノートだった。そこには1934年に起こった「帝人事件」という大疑獄事件に関わるものだった。調べていく内に戦前の財界で活躍した河合良成という人物が浮かび上がり・・・2017/04/09
のぶ1958
8
若干難解かも知れませんが、綿密な取材と金融業界での豊富な知識に感心。さすが元ファンドマネージャーです。 それほど長編ではないのですが、各所での細かな描写が凝っていて読み応えがあります。2020/02/18