内容説明
前漢の中国。大きな戦果をあげてきた大将軍・衛青を喪った漢軍は、新たな単于の下で勢いに乗る匈奴に反攻を許す。今や匈奴軍の要となった頭屠の活躍により、漢の主力部隊である李広利軍三万はあえなく潰走した。一方、わずか五千の歩兵を率いて匈奴の精鋭部隊が待つ地に向かい、善戦する李陵。匈奴の地で囚われの身となり、独り北辺の地に生きる蘇武。そして司馬遷は、悲憤を越え、時代に流されようとする運命を冷徹な筆でつづり続ける―。北方版『史記』、慟哭の第五巻。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年佐賀県唐津市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で第4回吉川英治文学新人賞、85年『渇きの街』で第38回日本推理作家協会賞長篇部門、91年『破軍の星』で第4回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。近年は、時代・歴史小説の分野にも力を注ぎ、2004年『楊家将』で第38回吉川英治文学賞、06年『水滸伝』で第9回司馬遼太郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
335
見所いっぱいの五巻。先のない戦に挑み、降伏し、狐鹿姑や頭屠との絆、そして帝が降した族滅という決断に、心が引き裂かれ、匈奴の将軍として生きる道を選んだ李陵。腐に処されて俄然不気味になった司馬遷。ここに来て、ゆくゆく物語を締め括っていくのであろう者たちが、切々と描かれる。しかし、その二名を凌駕する勢いで、蘇武の、北の地での暮らしが圧巻。ここまで大きな存在になってくるとは。蘇武と李陵の再会が楽しみすぎる。帝はマイペースに狂乱のピークに達しているが、たまに見せる鋭さが恐ろしい。後二巻、どういう纏まり方をするのか。2018/11/19
ehirano1
101
#側近が帝を暗愚にする。#帝は天になろうとする。#忠義は帝のためではなく自分のため。#自らの名誉を守るのは、弁明ではなく、何を成したか。#正論は時として理不尽。#司馬遷、言葉を選ばなかったが故についに・・・そして千年を生き残る書が誕生。#蘇武、極寒の地を生き抜き、一匹の狼を相棒にする。#空が割れるほどの寒さとは?#記録ではなく記述。#忘れたと思い定めるのは、忘れられないということである。これが弱さかもしれない。2019/02/02
レアル
82
劉徹によって其々の試練を与えられた3名。そして「生きるとは」「死ぬとは」という問い。そして司馬遷の生き方が印象的だった。物語の行き先を知っていても、つい好奇心で夢中になって読んでしまう。。男たちの生き方がかっこ良い!2014/04/11
優希
63
李陵、蘇武、司馬遷が物語の中心人物に据えられていきます。それぞれが置かれた場所で生き方を決めていきながらも運命の歯車に飲み込まれるように感じました。劉徹はどんどん暴君と化していきますね。ただ、劉徹が独裁力をつけたというより、周囲によりその権力の絶対性を強めて行ったのだと思います。蘇武の生きるか死ぬかの瀬戸際での越冬の力に圧倒されました。様々な場所で見せる生き様はどんどん佳境に入ってきたようです。2015/02/10
Kircheis
45
★★★★☆ 李陵、蘇武、司馬遷らそれぞれに困難が降りかかる。 その全てが、暴君化した武帝のせいというのが悲しい。 ここに来て蘇武が一番のお気に入りキャラに格上げ。この強い信念には頭が下がる。2018/03/05