内容説明
十一代将軍徳川家斉の次男として生まれた家慶。世嗣となったが現実には実権もなく、西の丸での窮屈な暮らしに鬱々とした日々を過ごしていた。そんな家慶は、市井の暮らしぶりを知り、政に生かしたいとの願いを持っていた。そこで生母の実家である押田家の中小姓、春川慶兵衛と名乗り、城を抜け出し江戸の町を物見に出かける事に…。その最中、日本橋の縮緬問屋越前屋が盗賊『火狐の軍兵衛』一味に襲われ、千両箱二つを奪われた。そこへ遭遇した家慶は、市井に潜む軍兵衛一味を洗い出す事を決意するが―。
著者等紹介
千野隆司[チノタカシ]
昭和26年、東京都生まれ。國學院大学文学部卒業。平成2年、「夜の道行」で、第12回小説推理新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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onasu
13
高貴な生まれの者が市中で勧善懲悪と言えば、自分には「水戸黄門」が浮かぶが、解説の末國さんによると、これは「若様もの」として昭和30、40年代に流行ったのが元で、以後も「桃太郎侍」、「暴れん坊将軍」などが流行った時期もあったが、今(出版2013年)は下火だとか。 そんなんでこちら12代将軍の家慶、事跡と言っても…、なんだけど、40年以上を将軍継嗣として過ごし、継いだ後としては天保の改革か。 そんな家慶24歳、市中を歩く描写や城から抜け出す算段も面白く、ちょいと一冊にはいいが、それ以上はいいかな。2021/09/07
Re:胡乱(うろん)
9
のちの12代将軍家慶が世嗣時分に市中にお忍び捕物帖。 結構むちゃくちゃ言ってるしやってる家慶に周りがなんか素直。 家慶自身が将軍になるのは45歳だから歴代将軍史上世嗣が1番長いんだよね、政に参加する訳でもなく、ずっと西の丸にこもっての生活…そりゃ世直しもしたくなるわ。 生姜好きの酒好き暴れん坊将軍(予定)…ってところかな。2020/08/18
高橋 (犬塚)裕道
7
星2。通勤中に読むにはまあ悪くないが設定も仕掛けも安直である。でもまあ続きも読むんだろうな〜。家慶とお加久、敏忠、与力藍澤がどう絡んでいくかが少し楽しみ。2023/02/22
テンプル
4
ナイスな時代エンターテイメント小説でした。暴れん坊将軍?的な感じの読みものでした。真実はどうなのかはわかりませんが、水戸黄門よろしく日本人は勧善懲悪物語が大好きです。軽く読めて非常に面白かったです。読者数が少ないのがちょっと残念です。2017/01/17
Totchang
4
本編に続いて読んだ解説が秀逸。末國善己氏は「若様が庶民を守るために悪と戦うストーリーが時代考証や通俗との批判に耐えられず、最近はすっかり影を潜めている」と述べておられます。その上で、この本が何故面白いかを様々な観点から述べています。それが一々納得させられるのです。豊かなために目標が見つけられない現代の若者が共感できるヒーロー、将軍継嗣の家慶が今後どのような謎に挑戦していくのか、楽しみで目が離せません。2015/02/27