内容説明
森沢夏織は、神戸にあるフランス菓子店“ロワゾ・ドール”の新米洋菓子職人。ある日の早朝、誰もいないはずの厨房で、飴細工作りに熱中している、背の高い見知らぬ男性を見つけた。男は市川恭也と名乗り、この店のシェフだと言い張ったが、記憶を失くしていた。夏織は店で働くことになった恭也に次第に惹かれていくが…。洋菓子店の裏舞台とそこに集う、恋人、夫婦、親子の切なくも愛しい人間模様を描く、パティシエ小説。大幅改稿して、待望の文庫化。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県生まれ。神戸海星女子学院卒。2003年、『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
225
神戸の菓子店の話。恭也の登場の仕方に、想像をかき立てられるね。未来から来たのか、実は幽霊だとかと考えちゃったよ。これで、ツカミはOKの出だし。専門用語が多いから、ちょっと読みづらい部分もありますが、面白かったです。夏織の恭也に対する想いが届いてほしいな。それと同時に立派なパティシエになってほしいですね。この作品にででくるケーキも食べたいですが、それより何よりもウイスキー入りのショコラ、めちゃめちゃ食べたい。この作品を読んだだけで太りそうだわ。2020/01/01
みっちゃん
142
暑さの中、ケーキ屋さんに駆け込みたくなる!読友さんからの頂き本。実はSF作家としての上田さんしか知らなかった私には嬉しい驚き。専門用語が頻発するところは斜め読みしてしまったが、ミステリーとしても読ませる内容でもあり、そこも楽しめた。続いて『ショコラティエの勲章』に進みます。2021/07/30
ちはや@灯れ松明の火
118
砂糖を甘く輝く薔薇の花へと変える指先は魔法のようで。金の鳥の巣に迷い込んだ銀の鳥は記憶を失くした洋菓子職人。追いつきたい、カスタードの鍋をかき混ぜるようにゆっくり伝わっていく熱。柑橘のムース・オ・ショコラ、メープル味のアイスクリーム、優しい思い出を味わう時の口元が描くしあわせのかたち。忘れたかった過去と信じていたい未来のルセット、離れることで掴む夢を祝う薄紅の花。追いかけたい、余分な熱を冷ますテンパリングなしでは綺麗なチョコにならない。あなたが咲かせた薔薇のリースを胸に、いつか出逢える道を進んでいこう。 2015/01/09
佐々陽太朗(K.Tsubota)
90
初読みの上田早夕里氏。ミステリーかと思って読み始めたが違っていた。ではラブ・ストーリーかと思ったらそうでもなかった。読み終わってみると意外にも真面目なパティシエの成長物語。一つの作品としてもう少し盛り上がりが欲しかった気がする。著者のHPを見て判ったのだが、近く続編が出版される由。山場はシリーズ第二巻で用意されているのかもしれない。本書の値踏みは第二巻を読んでからとしよう。むしろ上田氏の真贋はSF作品『華竜の宮』あるいは『火星ダーク・バラード』を読んでみないと語れないのだろう。姫路市在住作家、応援したい。2011/11/29
ひさか
74
2005年11月角川春樹事務所刊。大幅に加筆修正して2010年5月ハルキ文庫化。パティスリーの人情仕事小説。記憶障害を使って、演出する謎はわざとらしさが過ぎて、あまり楽しめませんでした。2018/03/19