内容説明
火星治安管理局の水島は、バディの神月璃奈とともに、凶悪犯ジョエル・タニを列車で護送中、奇妙な現象に巻き込まれ、意識を失った。その間にジョエルは逃亡、璃奈は射殺されていた。捜査当局にバディ殺害の疑いをかけられた水島は、個人捜査を開始するが、その矢先、アデリーンという名の少女と出会う。未来に生きる人間の愛と苦悩と切なさを描き切った、サスペンスフルな傑作長篇。第四回小松左京賞受賞作、大幅改稿して、待望の文庫化。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県生まれ。神戸海星女子学院卒。2003年、『火星ダーク・バラード』で第四回小松左京賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobby
148
これはまた圧巻のSFミステリ。火星を舞台に繰り広げられる壮大な捜査&逃亡劇を堪能。その作風は骨太ハードボイルド、そしてラストに向けて「この世に生まれてきてよかったと、心の底から思ってもらいたい。」まさに哀しきラブストーリーだ… “超共感性”という特殊能力を持つプログレッシヴ、その謎めいた存在が明らかになるに連れて一気に加速する展開を夢中で読み進めた。その背景として描かれるのは、人間の自意識過剰からのエゴであり、圧倒的優位を持つ者の悲哀…それでも分かりやすい敵味方の構図の中で導かれた優しさは決して悪くない…2021/03/20
つねじろう
59
う〜んクオリティ高いわ。しかもデビュー作だって。さすが上田早夕里。こじらせ過ぎてやけっぱち気味の警官とDNA操作で生まれた不思議な力を持つニュータイプ15歳の少女。スタイル抜群のアーマースーツが似合う相棒とマッドサイエンティスト的な父親。で舞台は火星。ほらSF的なもの全て揃ってる。それでいてアクションやミステリ要素もラブロマンスもたっぷり盛り込み読み手を飽きさせない優れもの。火星の情景描写も行った事があるみたいにリアル。思わせぶりな終わり方をしてるので是非続編を期待するものです。2020/08/14
ざるこ
53
治安管理局の水島は凶悪犯を護送中に怪物に襲われる幻覚を見て、意識が戻るとバディは殺され凶悪犯は姿を消していた。バディ殺害の疑いをかけられた水島は個人で捜査を始める…。人為的にデザインされた遺伝子で生まれたアデリーン、もっと遠い宇宙へ進出しようとするグレアム、無骨で人間臭い水島。キーとなる人間の「感情」が、人を繋ぐことにも周りを破壊することにもなる。SFというより人間ドラマという感じ。この話、地球でもよかったんじゃ?と思ったけど終盤にかかると納得する。「空を天蓋で覆った火星都市」この設定だけでもう満足。2019/02/24
とくけんちょ
52
再読。正統派SF。火星が舞台の遺伝子操作により生み出され特殊な能力を持つ新人類をめぐるよくある話。なんだが、物語に魅力がある。過去に問題を抱えて、火星で刑事になった中年男が同僚の相方を殺され、その謎にせまりながら陰謀にかかわっていく。絶対に外さないストーリー展開。またいつか読み直すだろう。2023/08/13
絹恵
51
信念という言葉を介せば、完全な悪など無くなってしまうように、ひとつの選択で護れたり、手が届かなかったりします。それが共感的理解を得られない正義だとしても、そして世界を欺いたとしても、私が私であるために、彼が彼でいるために、開かれた先で待っていたいのだと思います。その優しい罪ごと愛して、感情が燃え尽きるまで。2015/10/09
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