内容説明
カップルの幽霊が現れるキャンプ場、死んだはずの患者が暴れる病院、事故物件なのに使われつづける写真スタジオ。コンクリートの中に佇む謎の老婆…。書面には書かれずに噂だけがまとわりつく“ほんとうにあった”数々の「いわくつき」建物。怪談文学に新風を巻き起こした著者がおくる、選りすぐりの恐怖の不動産コレクション。
目次
崖下のキャンプ場
SDトンネル
Kトンネル
板前
廊下の男
廃屋の声
縮んだ眼
北棟
夢のなかの記憶
K北橋〔ほか〕
著者等紹介
福澤徹三[フクザワテツゾウ]
1962年、福岡県生まれ。営業、飲食、アパレルなどのさまざまな職業を経験したあと、デザイナー及びコピーライターに転業。広告代理店、百貨店アートディレクターを経て、フリーに。学校講師のかたわら、作家活動に入る。2000年、怖恐小説集『幻日』でデビュー。『すじぼり』(角川書店)で第10回大薮春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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夢追人009
242
福澤徹三さんの日本全国の心霊スポットの怪談噺を中心にした実話体験談集ですね。まあ本書に書かれた内容を信じる信じないは読者の自由ですが、とにかく私は科学が未来にどれだけ発達しようとも心霊の世界は永遠に残って欲しいと願いますね。『Kトンネル』Tさんが大学生の頃の話で、ある日の深夜、Tさんは同級生とドライブにでかけた。車はYさんが運転しTさんは助手席にいて二人は鎌倉のKトンネルに向かっていた。トンネルの入口に差しかかった時、上から白いものが落ちてきて、どすんっと車に衝撃が走った。友人が急ブレーキを踏み停車した。2022/04/16
アッシュ姉
67
福澤さん初読み。物件というより、いわくつきの場所で起きた怪異談を集めたもの。当事者だったら相当怖いだろうなと思うものの、一つ一つの話が非常に短いので、想像をめぐらせたり余韻が残ることもなく、次から次へと読んでしまい、あまり恐怖を感じられなかった。うう、もっと凍えるほど震えたい。福澤さんの怪談話ではなく、怖い小説があったら読んでみたい。2019/08/22
キンモクセイ
60
〝夢の中の記憶〟撮影用のスタジオは事故物件が多い。新人女優のTさんが出番まで寝ていた。魘されて起きたら「...あたし、この家で殺された」夢の中で体験したのか。ここは一家惨殺事件現場だった。〝トンネルの落書〟通学路の短いトンネルに落書があった。「なかまをさがしています」Dくんはクレヨンで返事を書いた。何回かやり取りの後Dくんは「うるさいバカ」と書いたら数日後「いえわかった むかえにいく」翌日からDくんは学校に来なかった。〝ビル街の草原〟弟と遊んでいたら一面が草原に。ビルも消えてやって来たのは鎧を着た男だった2021/02/20
田中
36
噂ある怪奇現象が発生する物件紹介は幕間つなぎのようにほんの少し挿入されているだけ。メインは、様々な怪異の体験談。落ち武者が突然現れる「ビル街の草原」はまるでタイムスリップしたような話。見ず知らずの女性(霊媒師と推測される)が唐突に訪問し、死者が伝言する「ゆきちゃん」は、現世の者を気にかける霊魂の存在だ。ホテルのベッドに化け物のような女性が現れる「ベッドの下」が一番の気持ち悪さがあった。部屋の空気がジメッとしていたり重い空気感があるところは、何かが潜んでいて変事が起こるのだろう。【日本の夏はやっぱり怪談】 2023/08/28
ネムコ
34
〆切に追われ、苦労した作品集、だそうです。楽しく読ませて頂きました。でも、ありきたりながら、幽霊より人間の方が恐いかも。おかしくなった介護人に介護される自分とか家族を想像すると「しゃれにならない!」と思いました。2017/05/17