内容説明
日航機墜落事故から十年、かつて警察官として遺体確認の現場指揮を執った父の突然の死。不良と呼ばれて世間から弾き出され、前科者として裏社会以外に行き場所をなくした男は、二度と戻るはずのなかった故郷で、リゾート開発を巡るトラブルと孤児院を食い潰した非道な詐欺事件に遭遇する。薄幸な兄妹。見え隠れする地元暴力団と巨大組織の影。やがては日航機事故との思わぬ接点が…。希代のストーリテリングとリリシズムが冴え渡る名品、待望の文庫化。
著者等紹介
香納諒一[カノウリョウイチ]
1963年横浜生まれ。早稲田大学文学部卒業。91年「ハミングで二番まで」で第13回小説推理新人賞受賞。『時よ夜の海に瞑れ』(文庫版『夜の海に瞑れ』)で長篇デビュー。99年『幻の女』で第52回日本推理作家協会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まさきち
57
高崎や伊香保を舞台にしたヤクザ者ハードボイルド小説。長らく不仲だった元警察官の父の死から動き出し、15年前の孤児院を舞台にしたレイプや詐欺事件、地元旅館への追い出しを目論む嫌がらせなど多くの要素が詰め込まれながらも、全てが絶妙に絡み合っていて大満足。更にそこに日航機墜落事故がスパイスのように加えられ、登場人物の心情を見事に作り上げていた事にも脱帽。本当に楽しめた一冊でした。2023/02/20
みも
43
あたかも官能小説を思わせる(僕の先入観強すぎ⁈)表紙は、骨太な内容からやや乖離している。本著は深い抒情性とサスペンス色を共存させる最上級の完成度。高村薫氏の精緻と天童荒太氏の平明な文体を両立させたソウルフルな筆致で、丹念に丁寧に、心の襞を指先で撫でるように人間を描く。暴力シーンにおいては徹頭徹尾リアリティを堅守し爽快さは無い。激情と諦観を同居させ、無骨で気骨ある菅井公平の人間性が魅力的。唯一の濡れ場シーンは生々しさを醸しながらも、嫌悪感を抱かせる事無く陶然とさせる美しさが秀逸。エンタメ性はあまり強くない。2017/03/22
GAKU
38
ヤクザ、ヤクザの女、金、裏切り、暴力、薄幸な兄妹、主人公の公平は「体が頑丈なのが取り柄」と言っている通り、何度傷つけられコボコにされても敵に向かっていく。ザ・ハード・ボイルドといった展開。600ページ強の長編でしたが、最後まで弛れること無く面白く読めました。最後はハッピーエンドで良かった。公平の舎弟の”アキラ”がなんとなく、「傷だらけの天使」で水谷豊が演じた”あきら”とキャラが似ているなと感じた。2024/10/21
ヨーコ・オクダ
21
裏表紙の煽り文にあった「日航機事故との思わぬ接点が…」ていうのに惹かれて、勝手にあの事故の新解釈みたいなのが絡んでくるのかとワクワクしてたのに、全然違った!でも、ガッカリ感はなし。だって、とってもエエ作品やったから。ヤクザ者、薄幸キャラ&境遇、芯の強い女、信頼、裏切り、闘い、別れ…ザ・ハードボイルドなストーリーなんやけど、やり過ぎ感がなくて、1つ1つのエピソードが丁寧に進行していく。「感動したー!」とか「涙出たー!」てな感じになりたい人には物足りないかも。うちは、この無駄にアツ過ぎない感じがお気に入り。2017/06/25
ロッシーニ@めざせ正社員
8
ヤクザ者の男が、父の死をきっかけに故郷に戻ったところ、詐欺事件に巻き込まれる。地方の観光事業って、たいていヤクザが絡んでるようですね。それに、この手の作品に出てくる女性は、いざという時したたかです!2013/01/19
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- カミオン No.437