内容説明
赤いリンゴに唇よせて/だまって見ている青い空/リンゴは何んにもいわないけれど/リンゴの気持はよくわかる(「リンゴの唄」より)―優しくも人の心を打たずにはおかない言葉で紡がれたサトウハチローの、珠玉の作品群。その詩は読む人を郷愁へと誘う強い言葉に満ちている。その作品百十九篇を収録した待望の文庫オリジナル版。
目次
母の思い出(ちいさい母のうた;おかあさんの匂い ほか)
粋をたずねて(かすかな痛みに;コンパクト ほか)
こころの詩(かくまき;爪色の雨(一・二・三) ほか)
わらべ唄(谷の子熊;いたいいたいウタ ほか)
流行り唄(リンゴの唄;長崎の鐘 ほか)
著者等紹介
サトウハチロー[サトウハチロー]
1903年、東京に生れる。本名は佐藤八郎。父は作家・佐藤紅緑、作家・佐藤愛子は異母妹。西条八十に師事し、『爪色の雨』で詩壇に登場。歌謡曲や童謡も数多く作詞し、62年に「ちいさい秋みつけた」で日本レコード大賞童謡賞を受賞。73年没
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
117
この詩人の詩は母親をテーマにしたものしか知らなかったが、これを読んで様々なタイプの詩を書いていたことが分かった。童謡「小さな秋みつけた」から分かるように、ささやかなもの、小さなもの、弱いものに心を寄せた詩人で、どの詩を読んでも優しい情感が伝わってくる。日本人の心の奥にある郷愁を言葉にするのも巧みで、だから有名な「リンゴの唄」のような詩が書けたのだろう。一番好きな詩は「駄菓子のノスタルヂア」だった。ハッカ菓子のような駄菓子ことを語りながら、友達のことを回想する詩で、友達の懐かしい顔が心に浮かんできた。2015/11/29
クプクプ
77
サトウハチローの本は初めて読みました。素晴らしい、の一言に尽きます。「リンゴの唄」は私の両親が幼少の頃に流行ったようです。日本の敗戦後、すぐに流行りラジオで流れたそうです。私の世代に馴染みがある詩は、やはり「小さい秋みつけた」でしょう。「ちいさい秋みつけた」が作曲されたのがサトウハチローが52才の昭和30年ですから、もちろん私は生まれていませんが、私が小学校高学年の昭和の最後の頃に大人に「ちいさい秋を見つけに行こう」と言われて雑木林を歩いたのでこの曲は定着していました。なかにし礼の解説が冴えていました。2022/11/14
ちぃ
9
好きになった詩「悲しくてやりきれない」「泣きたくなるのはいいことだ~若いからそれがぴたりとしてるんだ~もやもやなんかはそこらへぽぽいとすてたまえ」「むりすりゃどこかにひびがいる」「あの人に逢うとつんつんしてしまう~これだけいえばもう言わないでもわかるでしょう」 サトウハチローが愛したものは、淡い色、小さいもの、かすかな変化、音のしない音。2014/01/17
tohu-life
6
小学生の頃から童謡で慣れ親しんだ世界。「悲しくてやりきれない」も「おかあさん」も大好きでした。物の影から食べ物に至るまで、温かな眼差しの詩、大人の哀愁がたまらないです。「美しく自分を染めあげて下さい」が特に良かった。きょうも一日 ウソのない生活を おくりたいと祈る(略)なにもかも忘れて ひとのために働く 汗はキモチよく蒸発し くたびれも よろこびとなるーー2020/07/16
ぴ〜る
6
子どもの頃初めて読んだ詩集はサトウハチローさんのおかあさんだった。久しぶりに読んだサトウハチローさんはやっぱりあたたかかった。2016/01/06