内容説明
繊細な心象風景を描く象徴詩人として作品を発表すると同時に、多くの童謡・歌謡で幅広く親しまれている西条八十。本書は、『砂金』『見知らぬ愛人』『美しき喪失』『一握の玻璃』『石卵』の各詩集から、抒情詩・童謡・歌謡に至るまで、彼の広範にわたる詩作群を概観する百二十篇を厳選して収録した一冊。
目次
詩集『砂金』より
詩集『見知らぬ愛人』より
詩集『美しき喪失』より
詩集『一握の玻璃』より
詩集『石卵』より
抒情詩・童謡・歌謡 抄
著者等紹介
西条八十[サイジョウヤソ]
1892年、東京牛込に生まれる。早稲田大学文学部英文科卒業。在学中より、日夏耿之介、三木露風、堀口大学らと交わり、「早稲田文学」に作品を発表。1919年、第一詩集『砂金』を刊行後、早大にて後進の指導に携わる傍ら、鈴木三重吉主宰の「赤い鳥」に童謡作品を多数発表、大正期の代表的童謡詩人としての位置を占める。詩集『見知らぬ愛人』『一握の玻璃』などの他、童謡・歌謡を多数遺した。1970年逝去
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感想・レビュー
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芍薬
14
広大な海を無花果の葉陰に聞いたり、荒れ野を進んでいると思ったら恋人の顔の上だったり、無限のものが突如有限になるその距離感に、美しさに酔ってしまいます。2013/03/13
有沢翔治@文芸同人誌配布中
9
> 西條八十の名前は知らなくとも「母さん、お肩を叩きませう。/タントン タントン タントントン」の童謡は一度ならずも聞き覚えがあるだろう。このような童謡だけでなく、象徴派の抒情詩から意高揚映画の挿入歌まで作品を作った。「若鷲の歌」で、土浦の自衛隊駐屯地に歌碑が残っている。この詩集は彼の幅広い詩から120の作品を収録している。https://shoji-arisawa.blog.jp/archives/51530042.html2023/07/01
いやしの本棚
7
イェイツやダンセイニなど八十の訳詩に感銘を受け、オリジナルの詩も読まねばと思い購入。かなりやなどの童謡を書いた人という認識はあったけれど、初期の作がこんなに仄暗い幻想に満ちた象徴詩だったとは。皆川博子の作品にたびたび引用されるのも頷ける。この一冊を見る限り、八十の詩集の中ではやはり『砂金』に、凝縮されはりつめた死の幻想が見える。こんなにも美しく死を描いた…といえば、デ・ラ・メアの「謎」を思い浮かべるけれど、例えば八十の「誰か」などは、デ・ラ・メアの「だれか」に通じる不思議、怖さ、不安を感じる。2014/06/28
江藤 はるは
6
Mama that old straw hat was the only one I really loved But we lost it no one could bring it back Lile the life you gave me Like the life you gave me2020/05/19
skellig@topsy-turvy
6
西條八十氏を知ったのは皆川博子さんの作品を通してでした。水晶の様に透き通って輝き、鉱物の煌めきと玲瓏を感じさせてくれる詩の数々。単に冷涼というのではなく、情感豊かに風景を浮かび上がらせていきます。こんなに美しく言葉を織りあげる方がいたのだと思うと、日本語が母語で良かったことよなあと嬉しくなります。元気がないときにも西條ワールドは有効です。この美しい世界に接すると、自分の凡庸な落ち込みなぞどうでもよくなってしまいます。2012/05/01