内容説明
今まで日本に、これほど本格的かつ正統的な思索の書があっただろうか―。知識人が、ジャーナリズムによる「雰囲気の支配」の下にすすんで屈服している現在、自らの精神の有り様と思考の“構造”を八五点の図を示しつつ初めて全的に開示し、真の“知性”は如何にして獲得できるかを真摯に考察した画期的な知性論。
目次
序章 崩落しゆく知性
第1章 真理への渇望
第2章 学問における危機の正体
第3章 学際研究の可能性
第4章 解釈学の歩み
第5章 広がりゆく意味宇宙
第6章 意味表現における葛藤と平衡
第7章 平衡、伝統そしてルール
第8章 言語的活力の現われとしての価値追求
第9章 文明の病理とその治癒
第10章 生の実践におけるレトリックとスタイル
終章 言葉という物語
著者等紹介
西部邁[ニシベススム]
1939年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒。横浜国立大学教授、東京大学教授を経て、88年3月に辞任。83年、『経済倫理学序説』で吉野作造賞を、84年、『生まじめな戯れ』でサントリー学芸賞を受賞。現在月刊誌『発言者』主幹
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
12
全てに対して懐疑的なスタンスを保ちながら自ら思考を積み重ねていくことが知性であり、揺らぐことなくそうした在り方で居続ける姿が知性的である。自身が今まで生きてきた上での経験を踏まえて、人間は気を抜いたら即座に知性的でなくなる生き物だということに大抵の大人は気がついているだろうし、ただ生きていくだけならば知性なんて必要がないようにも感じているかもしれない。それでも自らを律して知性を育てながら生きていきたい。何でだろう。とても単純なことだけれどそっちの方が格好良く思えるからだろうか。2021/11/03
ぽん教授(非実在系)
7
ページ数の割に書いている内容は多く情報・概念密度がとても高い本。それだけ重要かつ見過ごしがちな概念を多数図示してくれている、という意味でとてもありがたい内容である。しかし、著者の得意分野である大衆と専門家批判をストレートに扱ったところ以外(例えば演繹・帰納・仮説や時間・空間など)は生煮え感が強かったり、もしくは著者の図示が半端にも見えたりもっと良い図式があるのではと思ったりすることがあった。しかし、去年亡くなった著者の遺志を継いでこの本をアップデートするのは非常に大変なことである。2019/02/16
ドクターK(仮)
4
知性とはいかに形作られ、そしていかにあるべきかをふんだんな図形を用いて解説した書。真善美を希求する者にとっての羅針盤となるに違いないと感じる一方、そんなものには関心を払わず大衆社会に頭の先まで浸かっている者にとっては、単なる難解な著者の自己満足のための書物としか映らないだろう。それにしても、これほどの知性の持ち主が現代の日本にいることに畏敬の念を覚える。2014/03/07
林
1
構造主義者としての西部邁が前面に出された本。中心テーマは「言語表現の実践方法」である。西部は言語(コミュニケーション)を社会現象の根幹に捉えており、本書では言語の「表現」機能を中心に解釈(分析)が行われている。言語表現には必ず矛盾が含まれ、それを調整するための平衡術として、伝統と慣習に裏打ちされた安定した構造を提起している。最後に知識人の責任について触れている。西部は、知識人の言動(表現)は、当人の生き方と一貫性のあるものでなければならないと考えており、西部の生の実践の考え方に触れ、火傷した気分になった。2022/10/01
POYOCHIN
1
曼荼羅みたいな図が分かりづらい。理解を余計に難しくしている。この本で西部の言ってることは概念的には大して深くないが、輸入概念を使って回りくどく書くので複雑に見える。西部の本を読んでいる人でこの本の思考法を現実の社会・人間分析に取り入れている人が何人いるか。この本がすばらしいというならそれができていて当然だろう。この本で言っていることを本当に理解しているか??大衆への反逆などは含蓄があって学びがある、面白いなと思って読んだが、この本はかなりの奇書・難物であるように思う。 2008/09/29
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