出版社内容情報
一度でも道を踏み外した者は、決して許されないのか?
万引き犯を死なせたコンビニ店主、万引きで捕まった過去を持ち、生活苦から必死に生きる女性。
各々の人生を通して描かれる苦悩と葛藤、そして再生――。
ドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』
『夫よ、死んでくれないか』で注目の著者が描く問題作!
大手フランチャイズ加盟のコンビニ店主・柳田克己は、「万引き犯など最低の人間」という信念を持ち、「万引きをさせない」のではなく、決して見逃さず「捕まえる」ことにしていた。
ある日、克己は菓子パンを万引きした男を捕まえようとしたが、もみ合ううちにその男を死亡させてしまう。
そして克己は逮捕され、人生は暗転していく。
一方、児童養護施設で暮らしていた頃に万引きで捕まった過去を持つミチル。
彼女はバイトを掛け持ちしながら必死に一人で生きていたが、コロナ禍の「シーセッション(女性不況)」で仕事を次々に失い、現在は違法メンズエステ店で働いていた。
必死に生きながら、自分の夢の実現を目指す彼女は時折思うことがある。
あの日、捕まっていなければ。
そんな二人が、ある事件を契機に巡り会うことに……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
142
いやぁ・・終盤、第四章の後半が急展開でバタバタな感じが惜しい。エピローグ含めもう少し読ませてほしかったかな。というのが読後の正直な気持ち。まさか捕まえた万引き犯が亡くなりその動画を拡散されることから物語は始まるのだが、もう色々てんこ盛りで口の中が不快感でざらつくのだ。多分その泥沼から抜け出せない人間はいるのだろう。顔が見えないから、手を変え品を変え好き勝手に誰かを貶める輩も無くならないだろう。恵が信じる「青い鳥」で結ぶのはちょっと強引な感じがするのは私だけか。それでも希望は必要だ!2025/06/05
ゆみねこ
82
万引き犯を追いかけ、過失から死亡させてしまったコンビニ店主・柳田克己。強い正義感の柳田は万引きを許すことが出来ない。執行猶予つきの判決後仕事も失い家族とも上手く行かなくなる。一方違法風俗店で働くミチルには万引きの過去があり、柳田の店で警察に突き出された。その2人が思わぬ形で再会、終盤の急展開。ネットの拡散や悪意ある書き込み、とても考えさせられた。最後は希望ある終え方で少し安堵。丸山さんの新しい一面を見せて貰える1冊。2025/06/08
ごみごみ
51
万引きを発端にしたある事件から広がっていく余波。その波紋は予想外に大きく物語は思っても見ない方向へ繋がっていく。ネットで職場や家族さえも晒され糾弾される、いわゆる「私刑」には怒りを覚える。証拠のない書き込みやリツイートが及ぼす影響力の大きさにも驚く。作中で何度も登場する「自業自得」の言葉に深く頷きながらも、ズルズルと負の泥沼に引き込まれていく様子がリアルで恐怖を感じた。どうなっちゃうのーー!? ハラハラしながら読んだが、ラストはうまく収まった感。2025/05/25
プリン
50
コンビニで万引き、警察に捕まり高校も退学になったミチル(安斉恵)。その後、危うい仕事をしながらも生きる目標の元に頑張る姿が眩しかった。間違ったことが許せない信念から万引き犯の女子高生を捕らえ、老人万引き犯を追詰め死亡させたコンビニ店主柳田。時が経ち事件をきっかけに2人は出会う。恨む気持ちも無く柳田の娘を救う協力をする安斉恵。性風俗、SNS誹謗中傷、レイプ、ホスト貢ぎと社会問題は山積みだが優しくまとめられ、人はやり直せるんだと教えられる。幸福の象徴である青い鳥。希望、救いがあり納得の題名。素敵な本に出会えた2025/06/12
sayuri
43
幸福や希望の象徴の意味が込められた青い鳥。けれど、登場人物達は皆一様に幸福とは遥か遠い場所でもがいている。園暮らしで万引きを止められない女子高校生・ミチル。行き過ぎた正義で万引きした男を死亡させてしまったコンビニ店主・柳田克己。被害者は一瞬で加害者になり家族までが崩壊していく。数年後、ある事件がきっかけで再び人生が交差するミチルと柳田。ミチルが働くメンズエステとは名ばかりの性風俗の実態と、客の性暴力に怒りを募らせながら、青い鳥の登場を待ち続けた。SNSの誹謗中傷や貧困問題を絡めつつ再生を描いた社会派作品。2025/06/05