出版社内容情報
精神科医・葛西幸太郎は、市長選の候補者に対する殺人未遂および放火の実行犯・犬崎理志の精神鑑定を担当していた。
犯行を淡々と語る犬崎に、葛西はある違和感を抱く。
精神状態が安定しすぎているのだ。
犬崎の中に、本来の自我を麻痺させ、代わりに彼の精神を支配している〈なにか〉が存在するのではないか――。
葛西が疑いを深める中、全国各地で不可解な動機による傷害・殺人事件が起こりはじめる……。
内容説明
政治家へのテロ行為、自動車による襲撃、ナイフでの殺傷―。別人のように性格が変わり、不可解な動機で凶行に走る。それは現代の精神疾患か、未知の感染症か、それとも…。
著者等紹介
山田宗樹[ヤマダムネキ]
1965年愛知県生まれ。『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画化、ドラマ化され話題となる。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞(長編および連絡短編集部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
227
一般人が突然に人格が一変し理由なき殺人鬼と化す〈夢の国〉症候群とは?精神の領域に踏み込む略称エモコンの恐怖が現実に導入されてもおかしくないリアリティ―と共に伝わってきてぞっとする戦慄を禁じ得ませんでした。この作品が初読みの著者さんでしたが確かな実力を感じましたね。また悲壮感や絶望感を感じさせずに常に冷静に強い姿勢で対処する主人公の医師に頼もしさを感じました。オリジナリティーは十分ですので今後はもっとインパクトとセンセーショナルなタイトルで読者にアピールして一世風靡して欲しいですね。#NetGalleyJP2025/02/08
しんたろー
133
近未来の日本、脳に働きかけてストレスを無くす機械『エモーションコントローラー』が普及している設定のSF小説で、精神科医・葛西を中心に、会社員・葉柄、OL・マヒルの3つの視点で進行…無差別なテロが頻発して、葛西が犯人の精神鑑定をすると恐ろしいことが段々と判ってくる。同時に葉柄とマヒルの身にエモーションコントローラーの影響が忍び寄ってくる。山田さんらしい特異な発想だが、現実的で想像し易いのでドンドン惹き込まれた。3人のキャラクターも親しみ易くて共感できるのが良い。現代社会の問題を捉えていて色々と考えさせらた。2024/10/31
ちょろこ
121
これがあったら怖い。ではなく、あり得るから怖い、一冊。それをまざまざと体験できた小説だった。負の感情を解消し幸福感などで精神状態を安定させる機器"エモーション・コントローラー"を使用する人の日常から始まる近未来ストーリーは終始ゾワゾワさせられる。スイッチ一つで得られる望み通りの精神状態は画期的な治療法になり得るだろうけれどマイナスへ、そして次第に本来の自分が蝕まれコントロールされていくとしたら…。こんな時代はすぐそこに迫っているのかもといやでも思わずにはいられない。いつの時代も技術進歩と危険は背中合わせ。2024/12/28
シナモン
101
相次いで発生した「夢の国」事件。そこには自身の感情をコントロールできる家電、エモーション・コントローラー、いわゆる「エモコン」が関与していて…。 負の感情をなくし、幸福感や充足感、万能感といった感情を生み出すエモコン。誰もがタップ一つで自分の感情を思い通りにできる。少し先の未来に起こりえそうな物語。恐ろしいなと思いつつもページをめくる手が止まらなかった。 2024/11/07
mint☆
100
薬を使わず負の感情を軽減したりやる気を出すことのできる機械、エモーションコントローラー。精神の安定を簡単に手に入れられる近未来。「夢の国に相応しくない」といった理由でテロや殺人が増加し始めエモコンのせいではないかと提唱する精神科医。だがそれでは説明のできない現象も起きはじめ…。自分が使うのはちょっと怖いけど必要な人はいると思う。でも脳に刺激を与えるという、そこに踏み込んでいいのか分からない怖さもある。最後はどこへ着地するのかハラハラドキドキ。スピード感のある文章で一気読みでした。#NetGalleyJP2024/08/31