出版社内容情報
精確で優れた仕事ぶりから、
「おまんまを喰いっぱぐれる心配がない」とついたふたつ名は『おまんまの安』――
摺師・安次郎は、亡き女房の実家へ預けていた息子の信太を引き取り、神田明神下の長屋に父子二人で暮らしていた。
そんなある日、兄弟弟子の直助が血相を変えて摺り場に飛び込んできた。
なんでも、共に切磋琢磨してきた彫師の伊之助がお縄になったという……。
江戸の人情が深く染み渡る、あたたかく切ない傑作時代小説。
内容説明
精確で優れた仕事ぶりから、「おまんまを喰いっぱぐれる心配がない」とついたふたつ名は『おまんまの安』。摺師・安次郎は、亡き女房の実家へ預けていた息子の信太を引き取り、神田明神下の長屋に父子二人で暮らしていた。そんなある日、兄弟弟子の直助が血相を変えて摺り場に飛び込んできた。なんでも、共に切磋琢磨してきた彫師の伊之助がお縄になったという…。
著者等紹介
梶よう子[カジヨウコ]
東京都生まれ。2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞大賞を受賞。08年「一朝の夢」で松本清張賞を受賞。15年『ヨイ豊』で直木賞候補、16年同作で歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞。23年『広重ぶるう』で新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
191
梶 よう子は、新作中心に読んでいる作家です。摺師安次郎人情暦シリーズおよび摺師が主人公の時代小説は、初読となります。 連作短編集、オススメは、『縮緬の端切れ』&『毛割り』です。絵師×彫師×摺師が三位一体で素晴らしい錦絵が出来上がったんでしょうね。 http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=70482023/09/10
真理そら
76
絵師、版元、彫師、摺師の共同作業で仕上がる錦絵。摺師は名前は出なくても最終工程なので錦絵の出来を左右する。ぼかし技に卓越したものがあり、くいっぱぐれがないという意味の「おまんまの安」という二つ名を持つ安次郎。武家の次男坊だったが火事で両親、兄を失い実家は叔父が継いでいる。叔父が幼い安次郎にした仕打ちは到底許されるものではないのに、なぜか叔父は許される気分でいる。久々の続編だったので人間関係を忘れ果てている、前二作も読み返そうかな。捕物よりも絵師界隈の物語の方が好きかも。2023/11/06
kei302
58
主人公が艱難辛苦に遭うとか、逆に大団円で終わるとか、ありふれた展開を良しとしない梶さんの矜持が伝わってくる「縮緬の端切れ」、息子の信太の成長を感じる「張り合い」、「邂逅の桜」では安次郎の過去が詳細に描かれシリーズ第1作目から再読したくなる。亡くなった息子の句集を出したい父親の気持ちに関わる人たちが気持ちを一つにして取りかかる「黒い墨」は職人たちの心意気を感じるとても良質な話。彫師の技術が見事な「毛割り」浮世絵が廃れたのが残念。実在した絵師たちと安次郎の仕事絡みのやり取りも興味深く読みました。 2023/10/09
baba
48
シリーズ3作目。少しづつ物語が動き、信太と一緒に暮らし始め、子どもの状況に心が和む。身勝手な叔父との和解が成り立ったのか、今後の展開が楽しみ。2024/03/10
万葉語り
46
シリーズ3作目。浮世絵の摺師、彫師、絵師、それぞれが自分の仕事にプライドを持ち、お客に一枚の絵を届ける。ライバルとの競い合いや足の引っ張りあいなど、おまんまの安にはあまり関係ないけれど、面倒見がよくて巻き込まれ体質なのか、身近でそういう事がよく起こる。安自身は今回インフルエンザで大変そうでした。2023-1292023/10/08