出版社内容情報
ある日の食卓、妻との別れなど、誰の心の中にもある風景や人生を、平易な言葉で美しくすくい取る詩人・長田弘。
「最初の質問」「おおきな木」「ひとはねこを理解できない」「ブドー酒の日々」「ふろふきの食べかた」など、
身近なもの・ことを題材に、安らぎと深い思索を深めてくれる詩の数々。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
99
長田弘による、ことばの調理のしかた。おいしい料理は、おいしいことばを生み出すことと同じ。「言葉のダシのとりかた」太くてよく乾いた言葉をえらぶ。言葉が透きとおってくるまで削る。削った言葉を鍋に入れて、黙って言葉を漉しとるのだ。それが言葉の一番ダシだ。言葉の本当の味だ。「コトバの揚げかた」じぶんのコトバであること。手羽肉、腿肉、胸肉の骨付きコトバであること。カラッと揚げることが肝心なんだ。どうでもいいものじゃない。コトバは口福じゃなくちゃいけない。全51篇、美味しくいただきました。ごちそうさまでした。2022/06/27
よこたん
46
“立ちどまる。足をとめると、聴こえてくる声がある。空の色のような声がある。”「立ちどまる」 ことばは、ありとあらゆるものから、常に降り注がれているのに。聴こえないことのさみしさを知る。ことばというものの重さを思い知らされる。しょっぱなの「最初の質問」は、いせひでこさんとの絵本で既読だが、やはりガツンと殴られる。歳を重ねても、いまだ問いかけに自信を持って答えられない。食べ物にまつわる詩がたくさん寄せられていて嬉しい。どれもちょっぴりぴりりと辛みがある。長田さんの詩をよむと、自分自身とも向き合うこととなる。2022/07/07
Go Extreme
3
最初の質問 おおきな木 散歩 隠れんぼう ねむりのもりのはなし ひとはねこを理解できない 探偵のバラッド 殺人のバラッド 言葉の死 キャベツのための祈り クロワッサンのできかた サンタクロースのハンバーガー アップルバターのつくりかた ショウガバンの兵士 ブドー酒の日々 テーブルの上の胡椒入れ タンポポのサラダのつくり方 幸福なメニューのバランス カレーのつくりかた パイのパイのパイ 五右衛門 言葉のダシのとりかた おいしい魚の選び方 イワシについて 天丼の食べかた ふろふきの食べかた2022/06/05
アルマジロ
2
また読み返す。やわらかい。美しさはあとからくる。2022/05/05
ケンサン
1
散歩、旅、お伽話、動物、食べ物、飲み物、バラッド等々、何気ない日常のテーマを題材に、さりげない言葉を絡ませ、箴言の数々・・ファーブル、アガサ、五右衛門、ゴーリキー、ピノッキオまで登場。●アメイジング・ツリー→仕事して、愛して、眠って、ひょいと、ある日、姿を消すのだ、人は、大きな木の中に●五右衛門→世のある限り盗人のたねは尽きまじ●ファーブル→お高い言葉には背を向けた。二十世紀の戦争の時代が残った、ファーブルさんの穏やかな死のあとに●ゴーリキー→けど、そうならなくちゃならねえことは、そのまま残るだよ2023/03/04