内容説明
「夫は必ず戻ってきます」。彰義隊に入った夫が金が必要になり妻・けいを質屋に預ける。けいは夫を信じ、帰りを待っている…。エンターテインメント性を高く評価された時代小説の新しい波!第12回角川春樹小説賞受賞作。
著者等紹介
渋谷雅一[シブヤマサイチ]
1960年東京生まれ。出版社勤務を経て、フリーの編集ライター、漫画原作・シナリオを多数手がけ、『質草女房』で小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とん大西
129
手練れてる…。著者さん初の小説らしいですが、しっかりエンタメとして仕上がってて最後まで面白く読めました。質屋・巴屋に女房を預けて行方不明となった彰義隊の篠田。その巴屋の老主の依頼を受けて篠田の捜索をするはめとなったド浪人の宗太郎。時は幕末明治維新。江戸は東京と名を変えたものの先行き不透明な混沌とした激動期。飄々とした宗太郎のロードムービーは篠田を追って江戸から会津へ。旅の道連れは何故だか新政府軍参謀の速水。時に牧歌的で時に緊迫感漂う道中。ミステリー仕立ての旅の終着点は…。座り良い読み心地にスッキリです。2020/11/15
mint☆
124
時代は江戸から東京になったばかりの頃。貧乏浪人の宗太郎は馴染みの質屋に行ったところ、店じまいをするので質草に自分の女房を預けていった客を探して欲しいと依頼され、会津へ向かう。ミステリー仕立てで進んでいき、ラストは意表をつくもので二度三度と驚かされた。読みやすいのは登場人物が皆キャラ立ちしていて輪郭がくっきりしているからか。これがデビュー作とは思えないほど面白かった。今後の作品も楽しみです。2020/11/23
ゆのん
88
主人公は貧乏浪人の宗太郎。その日暮らしの宗太郎だが江戸から東京へと変わる時代、日雇い仕事もなくいつものように質屋へ。そこには質草となった女性が。店を閉めるにあたり、女房を質に入れた侍を探して欲しいとの依頼を受ける宗太郎だが…。時代小説ではあるが、主人公がまるで侍らしくなくその影響かとても読み易い。侍らしくないとはいえ男らしさがあって好感が持てる。この時代の様々な生き様が胸に迫る。2612020/11/22
fwhd8325
73
幕末から明治へ、語弊があるかもしれませんが、まさに日本の夜明けだと思います。そして、この作品は新しい時代小説の誕生だと思います。物語の始まりから食いつきたくなります。ロードムービーのような展開は、まさに映像的です。そして、男と女。これがまたそれぞれの流儀を前面に感じながら美しい。2021/02/01
とろとろ
64
彰義隊に入った夫に、金が必要だと質屋に預けられた妻。その妻に興味を持った貧乏浪人の主人公は、質屋から夫の捜索を頼まれて逃亡先と考えられる会津へ向かう。その途中で、新政府軍の参謀・速水興平と名乗る人物と行を共にすることになった。夫が帰らない真相を探り、死んでいたら死んでいたなりの証拠を持って帰れとのことだったが、これがこの時代には珍しい探偵小説風の話になっていた。図書館待ちの期待薄で読んだけれども、最後は種明かしの解説もあって後半は中々に面白かった。これは、ちょっとした拾いものだったと思ったよ(^o^);。2021/01/23