内容説明
ある縁談に秘められた切なる祈り…浅草の油屋、利根屋の娘・お玉と、本所髄一の大店の主人との縁談が持ち上がったが、見合いの前日にお玉は置手紙を残していなくなってしまう。利根屋の命運を賭けて、身代わりとなったのは奉公人・おまい。当日、“えにし屋”を名乗る謎めいた女が現れて、おまいは美しく着飾らせてもらうが、その後もお玉の行方は一向に掴めないままだった…。縁を商いとするひとびとの物語。
著者等紹介
あさのあつこ[アサノアツコ]
1954年、岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。91年に『ほたる館物語』でデビュー。96年に発表した『バッテリー』およびその続編で、野間児童文芸賞、日本児童文学者協会賞、小学館児童出版文化賞を受賞。2011年『たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
193
これはあさのさんの新しいシリーズの開幕ですね?連作二話。特に二話目はゾクリとする。行間に漂う不穏な空気感がこの先の初を、えにし屋の面々を思う私の心をくすぐるのだ。えぇ、えぇ勿論追いかけますとも。楽しみにしています。だがしかし、あさのさん、どうか『弥勒シリーズ』の結末を読ませて欲しいです。心から欲しています私。2020/10/01
初美マリン
141
やはり単純な時代小説ではなかった、その一は、こういう結末になるほどと思い、その二では、どんどん険呑になっていく。これはまた楽しみなシリーズになるでしょう!2021/02/02
タイ子
109
人と人の縁を結ぶ、または縁を切るのを商売にしているえにし屋という店。不思議な魅力のあるお初、店主の才蔵が取り仕切っている。一話目の縁談話はこれぞ縁だなと思わせる展開でほのぼのとして面白い。2話目になると俄然これぞあさの流人間の業があふれ出る物語になっている。心の内なる叫び、ほとばしる思いがこれでもかと描写されるのがあさのさんの文章。ホラー?ミステリー?いや女の怨念。お初の正体がなかなか魅力的で才蔵との過去からの縁も興味深く語られていく。弥勒シリーズに続く人が織りなす光と影の物語をまた読みたい。2020/12/20
ゆみねこ
97
縁を商いとする「えにし屋」、縁切りや縁結びをあつかうこの店に持ち込まれた依頼を描く二つの中編。『花曇り』は大店に持ち込まれた縁談にまつわるお話、『夏の怪』はとある武家に秘められた陰を。新シリーズ開幕?えにし屋の面々がとても魅力的で次も読みたい作品です。2021/01/17
真理そら
88
カバーイラストの優しい雰囲気と違って第二話は盗賊団やら殺し屋やら殺伐とした要素もあって困惑。孝子さんの暗~い心理についていけない。第一話はえにし屋らしさのあるお話だったけれどおまいの選択に納得しつつももやもや感が残る。この優しさと果てしない暗さが共存する感じは『弥勒』シリーズ系かも。2020/12/12