内容説明
自慢の十字槍の腕前で大友の宿将・戸次鑑連(後の道雪)に仕官を許された柴田治右衛門(後の天徳寺リイノ)は、大友宗麟の近習となり順調に出世してゆくが、愛する女性のために主君を裏切り、蟄居を命じられた。約二十年後、道雪の推挙で再仕官したリイノは大友のために、命を燃やす―心震える歴史長篇。
著者等紹介
赤神諒[アカガミリョウ]
1972年京都市生まれ。同志社大学文学部英文学科卒、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、上智大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。私立大学教員、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kiyoshi Utsugi
30
島津と大友の戦いである丹生島城の戦いを題材としたもの。 第一部では、丹生島城の戦いのおよそ20年前にまだ柴田治右衛門と言っていた若き頃の柴田礼能を描いてます。そこで戸次鑑連(立花道雪)の機転により、柴田礼能の想い人であるマリアと結ばれ故郷の野津で信仰生活を送ることになります。 第二部では、戸次鑑連の頼みによって、大友宗麟を守るために丹生島城に入って、島津との戦いに臨みます。 最後は島津家久が得意とする釣り野伏せの逆手を取った逆釣り野伏によって、自分の死と引き換えに島津軍を退けるところまでを描きます。2021/10/22
サケ太
18
史実と創作が絶妙に組み合わされている素晴らしいエンターテインメント。滅びゆく大友家を支え、島津家の名将、島津家久と戦った天徳寺リイノ。彼は何故キリシタンとなったのか。波乱の前半生により説得感を持たせ、彼の精神性が作り出し、後半の島津家との戦いで、成長した彼の献身的な生き方が描かれる。前半で描かれた因縁と絆。それが後半で生きてくる。彼が描く人物たちの弱さと強さ。男に訪れた奇跡。彼が出会った者たちの想いを受け継ぎ、約束のために大友家を守った男。素晴らしい読後感。2018/07/29
maito/まいと
17
赤神さんの大友サーガ第2弾(時系列的にはこの作品が最終巻近くにあたるのだろう)。信教と己の意志という、戦国時代作品で最も難しいであろうテーマを取り上げ、リイノが使命を見出し、魂を燃やし尽くしていく。しかも二部構成で、もう一人の主人公(?)をたてて、リイノが気づいたその悟りを、最後の戦いで提示していくという、壮大なストーリーテリングが意欲的(よくよく読んでいくと『儚い光』と似ている構成だな)信教が人を縛るのか、それとも強くするのか。『大友二階崩れ』のアンサーにもつながる一作、続けて読むことをオススメ。2019/06/27
Ayako
9
大友シリーズ第2弾、実在の人物を扱いつつも、フィクションを織り混ぜた歴史エンターテイメントで引き込まれた。大友氏の家臣、柴田治右衛門の一生が描かれる。青年期に悪鬼と呼ばれた治右衛門はキリスト教と出会い、改心して聖者となる。『人は変われるのか?』というのは、人間にとって永遠のテーマだが、変わるきっかけとなる人物と出会えるかが分岐点となるように思う。治右衛門はそうした人々と出会う事が出来て、自分の価値観を改める事となり、また他人の人生をも変える事に繋がった。人物の描き方が丁寧で、感情移入することが出来た作品。2018/09/24
うしうし
7
突っ込んで感想を書きたいが、余裕がないので、別の機会に。大友宗麟の人間的な弱さが描かれており、極めて秀逸。また、再読したい。 「荒淫に身をゆだねる俗人に解脱など縁遠い話であり、参禅していても煩悩の淵に沈み込む一方の宗麟にとって、禅の道には不満が多かった。」(p51)2018/11/09
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