内容説明
2020年4月18日―。通信社の若手記者・田嶋庸介は興奮していた。陸連から発表された東京五輪女子マラソン日本代表3名の中に、円谷ひとみの名があったからだ。田嶋が7年前にこの少女と出会ったのは、福島県須賀川市。そこは、1964年の東京五輪マラソンで銅メダルを獲得した円谷幸吉と、ウルトラマンの生みの親・円谷英二の故郷であった。当時の円谷ひとみは、陸上をやめ、自分のやりたいことが見えず暗中模索する高校2年生。なぜ彼女は、日本を代表するランナーにまで成長できたのか。その陰には、東京五輪と「あの青空」によって結ばれた、不思議な出会いがあった…。
著者等紹介
増山実[マスヤマミノル]
1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。出版社に3年間勤務後、放送作家に。2012年、「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補に。同作を改題した『勇者たちへの伝言』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
201
1964年と2020年の二つの 東京五輪を繋ぐ物語。 円谷幸吉と円谷ひとみ… 昭和と平成を結ぶ糸は マラソンを通して、優しく 繋がっていく。 本物語を読むと、昭和の 光景が、懐かしい名前と 共にセピア色に甦って きて、本当に楽しい。 マラソン銅メダルの栄光の 後、カミソリで自殺した 円谷幸吉の名は、その 遺書とともに、いつまでも 日本人の心に残る…「円谷」への、「昭和」への想い のようなものが静かに 伝わってくる…そんな話だった。2015/05/02
それいゆ
88
図書館に3月に予約していたのがやっと届きました。はるばる海を越えて、坂出市立大橋記念図書館から取り寄せてもらいました。福島県須賀川在住の知人から円谷英二、円谷幸吉の二人の話や町のようすを聞いていたので、この本が発行されるのを心待ちにしていました。東京オリンピックのマラソンは、中2のときに学校の廊下で見ました。市川昆監督の映画の印象も強烈でした。ぜひ一度須賀川を訪れ、円谷幸吉メモリアルホールを見学し、街を散策してウルトラマンの雰囲気に思いっきり浸りたいと念願しています。2015/09/10
shiozy
42
さながら円谷幸吉(東京オリンピックマラソン銅メダリスト)の謎の伝記のようである。小説であるからもちろんフィクションであるが、円谷英二(特撮の神様)と遠い縁戚であるとか、岡本太郎の太陽の塔のモデルであるとか、虚実取り混ぜてのストーリィに引き込まれるのだ。舞台は福島県須賀川市。福島の復興を願って、「フクシマの空」を仰ぐ感動物語だ。2016/03/04
あやの
32
特別なことは何もない街だと思っていた須賀川が、とても素敵な場所に思えてくる。「須賀川は、歩く町なのだ。一歩七十センチの歩幅で歩く人間の町なのだ。」 街の様子も本当に丁寧に描写してあり、そうそう、そこの道ね!と頷きながら。円谷英二、円谷幸吉、松尾芭蕉、釈迦堂川、牡丹園、花火大会。こんな温かい小説にしてくださり、何だか涙が出そう。円谷幸吉のイメージも、「悲劇のメダリスト」ではなくなりました。奇しくも明日は円谷幸吉メモリアルマラソン大会。須賀川の空は晴れ予想。娘も空を見上げて走るでしょう。2015/10/17
ち~
26
前作「勇者たちへの伝言」がおもしろかったので、こちらも読んでみました。全編を通して、福島の震災にあった高校生、円谷ひとみの、陸上競技の挫折からオリンピックのマラソン選手になるまでを追うストーリーとなっていますが、そこに実在する東京オリンピックのマラソン銅メダリスト円谷幸吉が、前半はノンフィクションで、後半はフィクション、という形で登場します。ラスト付近の時空を超えた二人の交流にはとても引き込まれました。2015/04/15