出版社内容情報
明治13年(1880年)、福岡藩士出身の月形潔は、維新での政治犯を中心とする集治監の建設の団長として横浜港から汽船で北海道へと向かった。その旅のさなか、亡き従兄弟の月形洗蔵を想った。尊攘派の中心となり、福岡藩を尊皇攘夷派に立ち上がらせようとしていた洗蔵。だが、開国通商論を支持していた藩主・黒田長溥は、尊攘派の台頭を苦々しく思っていた。同じ志士たちとともに闘う洗蔵だったが、維新の直前に勤皇党弾圧により刑死した。維新の後、薩摩・長州藩の出身者が政府の要職を占める中で、福岡藩出身者に与えられるのは、政治の本流とは関わりのない瑣末な仕事ばかり。時は過ぎ、自分は今、新政府の命令によって動いている。尊敬していた洗蔵が、今の自分を見たらどう思うのか? 激動の明治維新の中で国を思い、信念をかけて戦った元武士たちを描く、傑作歴史小説!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤枝梅安
64
月、神の2章からなる長編。「月の章」では、幕末の尊皇攘夷運動に乗り遅れた形の福岡藩で運動の先頭に立ち、長州や薩摩に乗り遅れまいと努力した月形洗蔵が、藩主の理解を得られず斬首されるまでの苦難を描く。洗蔵の予言の通り、明治新政府内では福岡藩は冷遇される。「神の章」では、洗蔵の従弟・月形潔が、冷遇される福岡藩士の一人として、北海道の獄舎建設と管理の任務を得て北に向かう。自らの利益を顧みず藩の存続を考えた洗蔵の志を受け継ぎ、囚人達の厚生を図る潔だったが、ここでも彼の志は理解されることはなかった。2013/11/04
くりきんとん99
57
月形洗蔵と従兄弟の月形潔。洗蔵は、尊攘派として活躍し刑死。潔は、維新後に北海道に監獄を作る。それぞれに悩みながらそして苦しみながらの生涯が描かれている。 葉室さんの史実をもとに書かれている作品は、重くなかなか読み進められないんだけど、今回は、月形町と北海道の馴染みのある場所が舞台のせいか、面白く読めた。でも次は、フィクションがいいなぁ。2013/09/23
ゆみねこ
56
月の章では幕末の乙丑の変で命を落とした月形洗蔵を、神の章では洗蔵の従兄弟潔を描いています。ちょっと中途半端な印象で、あまり集中して読めなくて残念。2014/11/12
それいゆ
37
著者の新境地ともいえる明治維新後の北海道の刑務所を舞台にした物語には、新鮮さを感じましたが、何かもの足りませんでした。いつもの葉室作品とは違って軽い感じがするのと、この物語には主人公とともに歩もうとする女性の存在がありません。華のない作品です。2013/08/12
あすなろ@no book, no life.
30
吉村昭氏の赤い人を懐かしく思い出した。本作品は二部構成で、前半は主人公を軸に、維新の福岡藩を描く。後半は、北海道に刑務所を築き、典獄としての生きる様を描く書き下ろし作品。とても面白く読んだ後半は、もっと長く読みたかった。前半は、少し詰め込み過ぎかな?しかし、維新での福岡藩の立場は、勉強になった。また、吉村氏の赤い人とは違う視点で書かれている。いずれにしても、維新前から明治終わり頃の移り変わりの拙速感も感じられ、良作というか傑作になりそうだった作品だと思った。2014/02/15




