愛しいひとにさよならを言う

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 243p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784758412117
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

生まれたときから父親はいない。絵画修復家の母と、近所に住む母の年上の友人・ユキさんに育てられた。幼い日のわたしは、わたしたち三人が家族だと知っていた。家族という言葉は知らなかったのに。わたしは愛に飢えることもなく、三人のしあわせな日々がいつまでも続くと信じて疑わなかった。あの日がくるまでは―。十八歳の少女が辿ってきた様々な出会いと別れを描く、切なくも瑞々しく心ふるえる書き下ろし長篇。

著者等紹介

石井睦美[イシイムツミ]
神奈川県生まれ。『五月のはじめ、日曜日の朝』で毎日新聞小さな童話大賞と新美南吉児童文学賞を、駒井れん名義の『パスカルの恋』で朝日新人文学賞を、絵本の翻訳『ジャックのあたらしいヨット』で産経児童出版文化賞の大賞を、『皿と紙ひこうき』で日本児童文学者協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

けろりん

51
いまでもチチのことを考える。チチは、父親ではないし、そう呼んだ事すらもなかった。では何故"チチ"と、今言うのか。それを語るには、"わたし"が生まれる前に遡って話をしなくてはならない…。記憶と感情を整理するように時間が前後する導入部に翻弄されながら、物語に引き込まれて行った。寄る辺ない母子に差し出された無私の援け。守護天使のようなユキさんと過ごした日々。祖母が引き寄せた暗黒。暗闇の底でのたうつ"わたし"を、希望の光さす所へと引き上げたチチの手。特別な時にさよならを告げ、それを力に歩みを進める、旅立ちの物語。2021/05/10

なゆ

44
できれば言いたくないけど、生きていくなかではさよならを言わないといけないこともある。たった一人で子供を産み育てている母・槇と娘のいつか、そしていろいろ手助けしてくれるユキさん。家族ではないけど、家族のような温かさでいつかの成長を見守るユキさんとの三人で寄り添う日々が、ずっと続くような気がしていた。父親ではないけどチチという母の友達との日々も。〝ひとは同じ悲しみに留まることはできない〟とあるけれど、それは悲しみだけではないのだな。それにしてもいくら厳格とはいえ祖母の滞在中のあの息苦しさはあんまりだ。2014/07/17

ミーコ

42
未婚のまま、シングルマザーになった槇さん 娘のいつかちゃん 区役所勤めのユキさんに助けられ支えて貰いながら不自由なく育って行く。ユキさんって何て素敵な人なんでしょう。年月が経ちユキさんは認知症になった母親を看る為 故郷へ…。母親と2人の生活に慣れて来た所へ確執のあった祖母が…と話は進んで行きます。気持ちかわザワザワしながら読みました。槇さんの男友達の穰さんに娘を預けるのが、どうしてもすんなり来なかったです。でもこんな最期には衝撃を受けました。愛おしい人にさよならを言う日からは逃れられませんね。2020/08/29

むぎじる

41
家族とは、「夫婦とその血縁関係にある者を中心として構成される集団」と辞書にはある。この本を読んで、心や気が通じ合っている関係こそ家族なのでは?と感じた。その人を喜ばせたい、温かい気持ちでいてほしい、という気持ちでつながっていた、ユキさんと槇といつかの純粋な関係がとてもうらやましく、ほほえましかった。無償の愛情を持ちながら、頼り頼られて支えあいながら、家族の関係は深まっていくのかもしれないと思う。2014/02/11

カノコ

39
絵画修復の仕事をする母と、母の年上の友人であるユキさんに育てられた少女、いつか。三人で過ごすのが普通だっだ少女の、出会いと別れの物語。特段かわったことが起こるわけでもないし、派手な展開があるわけでもない。ただ、柔らかな光が差しているような穏やかな文章に包みこまれるが心地よい。日常のなかの「普通」を丁寧に拾い上げて、ネガティブなつながりすらも甘やかに描く。この作品のなかでは、人と人とのつながりはどれもきれいに見えた。あまりにも美しく悲しい「愛しいひとにさよならを言う」というタイトルがすべて。2020/01/31

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/6427983
  • ご注意事項