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内容説明
私は、誰からも必要とされていない人間だった。もちろん研究所にとって不可欠な存在だったはずだけれど、それは一個人であるメイ・オータムをではなく、あくまでも被験体ナンバー5ACを必要としているだけのことに過ぎなかった。そんな私が生まれて初めて経験した、その気持ちとは―これはメイとみまり、二人の少女が描くハートウォーミングな物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころん
11
タイトル通り、とても優しい物語でした。地球の9割以上を宇宙生物に支配されてしまった未来の日本で出会った、遺伝子レベルで戦う力を持たされたメイと、生まれてから人為的に戦う力を与えられたみまり。メイとみまり、第十七小隊の隊員たちのやりとりが優しさと温かさにあふれていて、戦いという現実とのギャップが良い対比になってたと思う。設定とかストーリはつっこみ所があるんだけど、そんな野暮なことはしたくないと思えるくらい雰囲気が良い。今のままでいられるのなら戦争なんて終わらなくてもいいかもれない、という一言が印象的でした2012/01/29
シュエパイ
11
地球中を支配する宇宙からの侵略者に対抗すべき、人工的に生み出されたサイコドライブ・チルドレン。同じ目的を持って、後天的に脳を弄られて生み出されたサイコドライブ・ブースト。そのいずれもが、明日にも死ぬかもしれない危うさを両立させながら、奇跡のようにたった一人だけ生き残った少女の物語。初めて触れたラボの外の世界、戦場、部隊の仲間たち。明るいルームメイト、優しい隊長、頼れる技師官、美味しいご飯を作ってくれる料理長・・・。明日無意味に死ぬかもしれないこの命なら、大切な人のために使おう、って。本当に、一番に、優しい2012/01/25
1_k
8
小説という媒体でロボットものは難しい。これが定説です。本作は、「ロボットもの」を前面には出さずに、優しいお話の演出のための道具として使うことで、この問題を上手く回避しています。スイカの塩でしかないので、小説では書ききれない迫力、深みのある設定展開などロボットものに不可欠なものが足りなくても、満足いくできになるのです。また、偉大すぎる先例「フルメタ」と比較されるのも、作風・土俵を全く異なるものにすることで上手く避けている。「優しいお話」という土俵という独自のジャンルを作り上げた作者の作戦勝ち。やられました。2012/03/12
テツ
8
これ、すごくいいタイトルだなあ。お話としての設定や展開自体はそんなに珍しいものではないと思う。ただ、だからこそこれだけ響くのではないだろうか。また、個人的に主人公がメイというのが面白かった。自分が見聞きしてきたお話では、男の主人公がいて彼女がヒロインとか、女子の友情モノだとしても、みまりが主人公になったりすることが多かったと思う。メイが主人公になることで、お話が新鮮な視点で見られた。〆もよかったし、素晴らしい物語でした。2012/02/04
Mono
7
読んでて優しい気持ちになれる物語。生まれて初めて経験する外の世界、湧き出す気持ちに戸惑いながらも、新しい生活に順応していく過程が丁寧に描写されていて、とても素晴らしかった。ラボにいた時にはいつ死んでもいいとさえ思っていたメイが、『死にたくない』と思えるようになったその変化は単純に嬉しかった。2012/02/09