内容説明
漢との和平のあかしとして匈奴の呼韓邪単于に嫁した王昭君。その名を不朽のものとしたのは、後に生れた数多くの文学・芸術作品である。美貌を正しく描かれなかった逸話、皇帝に選ばれなかった逸話、国境を越える昭君を慰める馬上の琵琶の調べ、異国へ嫁ぐ女性の哀感―こうした物語が、詩歌・歌謡・説話・物語だけでなく、舞台芸術や絵画、音楽へと広がりながら二〇〇〇年の時を超えて、それぞれの時代や地域において再構築・脚色され、受け継がれてきた。書かれ、語られ、描かれ、歌われ、舞われ、奏でられてきた多様な表現は、〈昭君文化〉と呼ぶべき豊かな世界を形成している。本書は、この〈昭君文化〉を、遊牧民族と漢民族に関する交易史・文学・演劇・美術の四分野から読み解き、各表象の成立背景や地域性、受容の広がりを明らかにする。
目次
遊牧民のシルクロード交易―匈奴からウイグルまでの中央アジア支配―(中田裕子)
1 文学における王昭君(宋金元の題画詩にみる王昭君像(松尾肇子)
院政期における説話としての王昭君―『龍鳴抄』にみえる『俊頼髄脳』の影響―(妹尾恵里)
室町期における王昭君像について―妙心寺大心院蔵画軸を中心に―(高語莎)
『翰林五鳳集』所収王昭君詩訳注稿(泉紀子;高語莎;松尾肇子;米山敬子))
2 演劇における王昭君(王昭君はなぜ自害したのか―元雑劇『漢宮秋』と『梧桐雨』との比較を中心として―(桜木陽子)
曹禺『王昭君』とその影響(瀬戸宏)
日本古典芸能における王昭君の描き方―歌舞伎『傾城王昭君』を中心に―(中尾薫)
新作能《王昭君》創作の背景と意図(泉紀子)
校注 新作能《王昭君》梗概・詞章・注・現代語訳・上演記録(泉紀子)
中国語訳(梗概・詞章)(高語莎))
3 美術における王昭君(東洋的歴史画の研究―菱田春草筆《王昭君》を中心に―(日並彩乃))



