内容説明
論考編の五章は斬新な発想。文学史の中の『源氏物語』ではなく、『源氏物語』の中に文学史を置く、逆転の発想と実践作業の報告。歌舞伎における舟橋源氏と北条源氏の比較から長編性と短編性を論じ、宇治十帖は長い短編物語と断じる。教科書の定番である若紫巻の北山の場面から、先読み注釈の危険性を述べる。雑誌『むらさき』をとおして、皇統の問題を避けた谷崎源氏以前に存在した研究の自主規制の状況を指摘。戦後の与謝野源氏と谷崎源氏の比較から、豊穣な出版文化史の実態を解明。逍遥編の五章は簡潔な問題提起。桐壺巻冒頭を当時の読者たちはどのように読んだのか。花散里を女性表象という観点から捉え、玉鬘の人生を暴力に囲繞されたものと位置づける。“胡蝶掌本”でしか読めなかった幻の「谷崎源氏逍遥」を再録する。最後に近時の最良の研究文献を紹介し、平安文学とその周辺の研究状況を俯瞰する。
目次
第一編 論考編(『源氏物語』の内なる平安文学史;歌舞伎から『源氏物語』を考える―長編性と短編性―;光源氏と若紫の少女の出会いをどう教えるか;紫式部学会と雑誌『むらさき』;戦後の与謝野源氏と谷崎源氏―出版文化史の観点から―)
第二編 逍遥編(桐壺巻冒頭はどう読まれたか―定子後宮への違和―;花散里は「おいらか」な女か―『源氏物語』の女性表象―;玉鬘の人生と暴力―『源氏物語』の淑女と髯;谷崎源氏逍遥;研究の新しい風)
著者等紹介
田坂憲二[タサカケンジ]
1952年福岡県生まれ。九州大学大学院修了。博士(文学)。福岡女子大学、群馬県立女子大学、慶應義塾大学教授を歴任。2018年定年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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