内容説明
未検討長篇を考究対象とし、「旅愁」へと接続されて行く過程を検証。横光利一が「旅愁」へと誘引されて行く動機として、初期以来、近代・機械文明に対する、厳しい批判眼を持っていて、それが小説作品に形象化されていた事を明らかにした。これらは、「旅愁」の一部に見られる国粋主義的記述とは、一見矛盾するものとも見えるが、横光の場合は、この近代文明への批判意識が、「純粋小説論」の時期を経て、難解と忌避される表象に入って行ったと考えられる。また、未完の長篇小説「旅愁」に関して、作中の歴史に関する記述などに重きを置いて、論述した。
目次
第1部 新感覚派期の継承と、近代科学への反駁の萌芽(国語教育との関連、あるいは馬車の不思議―「蝿」論;テクスト化される階層―「朦朧とした風」・「七階の運動」論;彷徨する感覚と言語面での新感覚―「上海」論;高低差の悲喜劇―「高架線」・「鳥」論;反近代の物語―「機械」論)
第2部 「純粋小説論」の成否(難解な理論の内実―「純粋小説集」論;霧の中の純粋小説―「寝園」論;“神”へ傾斜する読者参与意識―「時間」論 ほか)
第3部 渡欧体験と「旅愁」への逸脱(渡欧時の心理と小説への形象化―「欧洲紀行」・「厨房日記」論;感覚表象と逆説的論理―「終点の上で」・「恢復期」・「罌粟の中」・「微笑」論;偽史の誘惑―「旅愁」論(一)
キリスト教・建築物―「旅愁」論(二)
“不通線”への通路―「夜の靴」論)
著者等紹介
中川智寛[ナカガワトモヒロ]
1978(昭和53)年2月三重県伊勢市生まれ。2022(令和4)年4月東海学園大学人文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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