内容説明
「全く国文の修養をおこたれる十数年前においてよくもかかる雅致の文をなししか」と上田敏を驚嘆させた明治の文語訳聖書(元訳)の訳文は、原文に忠実な訳を目指す力と聖典に相応しい文体を目指す力とが調和した名訳である。本書は、文語訳は漢訳の書き下し文にすぎないとする通説を否定し、独自の和漢混交文体に外国語の翻訳によって生まれた表現などを取り込んだ、新しい文体によって書かれたものであることを明らかにする。
目次
前篇 訳文の研究(ヘボン訳福音書の成立;委員会訳新約全書の成立;委員会訳旧約全書の成立;ヘボン訳「箴言」の初訳と改訳―委員会訳の用字・用語・文体)
後篇 訳語の研究(「愛」―「雅歌」の用例から;「聖霊」と「霊魂」;「栄光」)
付論 奥野昌綱訳『真理易知』について
著者等紹介
吉野政治[ヨシノマサハル]
1949年福岡県に生まれる。1975年同志社大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、同志社女子大学名誉教授。一般財団法人新村出記念財団理事、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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