内容説明
魯の春秋にはじまる編年体史書の歴史は、平安朝において日本的な展開を示し、かな散文に出会うことによって日本語の歴史叙述である栄花物語を生み出した。本書では儒教思想に淵源を持つ編年体の時間と機構が、かな散文の文章による作品として実現するさまを探り、また仏教思想の高潮が深く刻印を与えるさまを確かめた。そこには栄花物語の二つの相貌、すなわち「年代記」と「信仰の書」という、異なった相貌が見いだせる。関心を持たれることの少なかった栄花物語が、多様な史的観点から研究可能であり、平安文学ひいては日本文学において重要な作品であることを明らかにする。
目次
第1章 編年的時間(編年的時間の思想性と機能性;日本紀略内部の異質性について ほか)
第2章 物語の全体性と歴史叙述の部分性(作品の部分性と全体性;固有名詞と歌物語 ほか)
第3章 死と信仰(死をめぐる叙述について;死をめぐる叙述について、ふたたび ほか)
第4章 技法と思想(系譜記述の問題;はつはなの巻の「むらさきささめき」の一節をめぐって ほか)
第5章 ことばと文体(日記文学の文体と栄花物語;歴史叙述としての栄花物語の文体 ほか)
著者等紹介
渡瀬茂[ワタセシゲル]
昭和26年7月に兵庫県尼崎市、いにしえの津の国は神崎の里のわたりに生まれる。戦後転勤族の子弟として関東に移り、東京都立石神井高等学校および東京都立大学人文学部に学ぶ。学習塾、中高等学校、看護学校、短期大学、大学などの教壇に立ち、国語や国文学を教えた。現在は姫路大学(旧近大姫路大学)教育学部に勤務し、「日本語表現法2」「国語1(国語)」「文学」「比較文化論」を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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