内容説明
私小説の方法を逆用することによって新しいナラティブを現実化した大江健三郎、実生活を無媒介に表白する私小説の作家と目されながら、見かけ以上に複雑な構造の小説を書いた志賀直哉、さらには、実記でありながら、その根拠となる事実からの脱化を内的要請とする(明治期の)ノンフィクションの多様な試みを読解する。
目次
1 大江健三郎と周縁(辺境)(大江健三郎と六〇年代の「アメリカ」―ラルフ・エリスンのいわゆる「多様性」をめぐって;大江健三郎と北方少数民族―われらの内なるギリヤーク人 ほか)
2 大江健三郎と先行文学(大江健三郎と志賀直哉―「自己探検」の旅程;大江健三郎と谷崎潤一郎―関係性の阻害 ほか)
3 志賀直哉(「大津順吉」の二元的な自己―志賀直哉とツルゲーネフ;「城の崎にて」―境界領域の病理 ほか)
4 明治期のノンフィクション(石井研堂『日本漂流譚』―孫太郎漂流記の場号;乾坤一布衣『最暗黒之東京』―貧民窟探訪記の成立 ほか)
著者等紹介
一條孝夫[イチジョウタカオ]
1945年、長野県生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、帝塚山学院大学リベラルアーツ学部教授。専攻は日本近代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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