内容説明
二〇〇七年六月九日に大阪大学で行われた日本近代文学会関西支部春季大会での成果を収める。関西の鉄道網の発達は、文化の移動をもたらし、空間の配置、時間の感覚、そこに生きる人々の経験を劇的に変えた。関西鉄道のマトリスク(基盤・母型・回路)が、関西という土地の近代をどのように創りあげたのか、そしてそれらは関西の文化にいかなる影響を与え、文学はそうした鉄道のもたらした近代といかなる関係を取り結んできたのかを追求する。
目次
刊行の挨拶
企画のことば―鉄道は文学に何を運んだか
蒼井雄「船富家の惨劇」の時刻表トリック
関西の鉄道と泉鏡花
「関西」と「鉄道」のディスポジション―横光利一の場合
関西私鉄をめぐる断想―三人のご報告を拝聴して
企画を終えて―質疑応答の報告と展望
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わんにゃん
3
原武史の「関西私鉄をめぐる断層」がなかなか面白かった。「有名人の思想を解明するだけでは、その時代の政治体制の思想を解明したことにはならない。そもそも、思想というものがすべて言説化されているという前提自体が間違っている。鉄道や広場にも思想はあるのだ」という言葉が特に心に残っている。2021/05/21
あまち
0
近代文学会の関西支部でやったシンポジウムを書籍化したもの。一番最初の蒼井雄の「船富家の惨劇」についての論文が自分のです。この論文はまあまあカッチリ書けたと思う。また、こんなのを書けたらなあ。。。