内容説明
鎌倉時代の掉尾を彩る絵巻、『春日権現験記絵』初の全注釈成る。承平七年(九三七)の託宣にはじまり嘉元二年(一三〇四)の奇瑞までを記す春日明神霊験伝承の集たる本絵巻は、多くの文化的・社会的事象を織り込んだ、汲めども尽きせぬ豊かさに満ちている。ものがたられる伝承が史実を内包しつつ、高度にことの本質を描き出すことは確かにあり得たのである。そうした、含意や寓意が伝承の行間に明滅するさまを、本注解においては、説話研究の立場からできる限り捉えようと試みた。これは、人文学における学際的研究の必要性が叫ばれるなか、文学の領域からの日本文化学講築へ向けた成果報告でもある。
目次
注解
解説論文(『春日権現験記絵』と貞慶―『春日権現験記絵』所序貞慶話の注釈的考察;『春日権現験記絵』と明恵―巻十七・十八論;『春日権現験記絵』の信仰的背景―春日神の本地説を中心に;『春日権現験記絵』の社会的・人間的背景;『祐春記』から見る「神鏡奪取事件」―『春日権現験記絵』巻十九読解のために)
特別再録(春日本『春日権現験記』の解説)