内容説明
監督・小津安二郎に差す、兵士・小津安二郎の影。小津映画の精緻な解読を通じ、「昭和」「日本」とは何かを明らかにする、新しいタイプの歴史書。
目次
序章 ピースの欠けたパズル―『晩春』批判
第1章 帝国の残影―小津安二郎の『暗夜行路』
第2章 大陸の光景―沈黙する前線
第3章 暴力の痕跡―戦争の長い影
第4章 叛乱の季節―中国化と日本回帰
結章 呪わしき明治維新―『東京暮色』讃
著者等紹介
與那覇潤[ヨナハジュン]
1979年生まれ。東京大学教養学部超域文化科学科卒業、同大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員などを経て、愛知県立大学日本文化学部歴史文化学科准教授。専攻は日本近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小鈴
7
「いちばん日本的だと日本人が思っている映画監督」小津安次郎。日本の家族を描いたことで有名なこの映画監督は、中国戦線を転戦し、生涯結婚をしなかった。日本を描いたとされる映像から、帝国の残映を感じた著者は、日本的と言われる小津映画から、中国化現象(≒帝国の失敗)から従来の小津映画の見方を相対化する。特に、最後の章の「明治と近代」は逸品。明治大学校歌の残響。私たちは帝国だったことを忘却し、小津映画の家族に夢を見る。2012/04/13
のの
4
実はあまりにさらりと書かれすぎていて、最後らへんになるまでうまくのっかることができなかった。終章を読んで、何故小津からこういう話を思いついたのかがわかってから、そういうことかと見えてきた感じ。再読が必要。 あとがきを読んで、うっという気分になった2011/01/26
よこづな
3
先行する言説にある誤りや見落としはそれ自体資料であり、ここにあるいくつかの指摘もそうなりうるはずなのにそうなっていない。映画批評のフレームに拘らねばならない自らの政治性を見直すべき。2011/05/04
メルセ・ひすい
3
15-03 映画はプロパカ゜ンダ? の時代。嘘の嫌いな小津。「映画は現在と過去のいずれとも関係を結ぶもの・・・と手間暇かけて練り上げていた… 」というほど、かつて強力なメデイアであったが・・・今は昔…映画を忠実なものとしては誰も捕らえていない時代… 反解釈 再解釈 そこからヒトスジの歴史 文化伝承論 広義でいう史資科学の担うべき 大きな課題なのかもそれは時間と時代がおのずと決めていく日本社会が継承され続けての前提条件のうえに…監督・小津安二郎に差す、兵士・小津安二郎の影。小津安二郎の一連の作品2011/04/23
chiro
2
小津安二郎の作品を通して昭和の時代を辿る試みはその企図が面白く、かつ歴史家という著者の視点が小津作品を見る目の客観性により、まさに「帝国の残影」を際立たせていて興味深い。2021/02/28